『デルフトの眺望』

デルフトの眺望(c. 1660 - 1661) - 作者: Vermeer, JohannesMauritshuis

ヨハネス フェルメールについては、あまり知られていません。そのため彼は「デルフトのスフィンクス」とも呼ばれます。彼の人生についてはっきりわかっているのは、デルフトで生まれ、生涯この街で暮らしたということです。

この絵は、南側からコルクの運河越しに見たフェルメールの故郷デルフトが描かれています。『デルフトの眺望』は、オランダの黄金時代における最も有名な都市景観画です。しかし、フェルメールによるこの街の描写は正しいものではありません。実際の配置より画面構成を優先しているからです。それでも、まるで 350 年前の街に出かけ、コルクにある家屋の最上階の窓からデルフトを見ているかの感覚に陥ります。

これはロッテルダム門で、中世の古い城門です。ここから街に入る人は、最初に跳ね橋を渡ってから、前の 2 つの尖った塔を持つ建物に至ります。その背後には左側の建物、正門へと続く狭い通路があります。フェルメールは軽いタッチで壁を塗ることで、レンガの古い外観を表現しています。

デルフトには街の南側に 2 つの門がありました。これはスキーダム門です。この門の前にはかつて建物がありましたが、1600 年頃に取り壊されました。

屋根付近に時計があるために、スキーダム門は縦に細長く見えます。

門の前には、内陸部の水路で物資を運ぶために使用された 2 隻の帆船が描かれおり、

フェルメールは、白い絵の具をたっぷりと付けたブラシで折り畳まれた帆布を塗っています。

オランダで快適な旅をするには、馬によって牽引されるはしけを利用するのが便利でした。ここでは、数人の旅行者が波止場でロッテルダム、スキーダムまたはデルフスハーヴェン行きの定期船を待っている様子が描かれています。

フェルメールの都市景観画において、人物は二次的な重要性を持っています。この作品でも、貿易が盛なために往来の多いこの街に対して、描かれた人が少ないため静かな印象を与えています。描かれた 2 人の女性も、ほとんど音を立てていないようです。

当初、女性の右側には男性が描かれていましたが、フェルメールは彼を塗りつぶしてしまいました。

フェルメールは何かを描写するための最善の方法を見つけるため、絶えず努力していました。相当厚く絵の具を重ねることもあれば、非常に薄い層しか塗らないこともありました。黒い船(漁業用の外洋船)をたっぷりの絵の具で塗り、近くの水面に反射した光に照らされている様子を表現しました。水の描写には油絵の具の薄い層を境目なく重なり合わせるという技法を使っています。これによって、水が限りなく透明に近く見えるという効果が生まれています。

古い門や壁のある街の端は、全体的に影に包まれています。しかしフェルメールは、中央の橋の上に観る者の視線を集め、さらに朝日に照らされた街の中心に向かって誘います。

手前ではなく遠方に光を描くことで、フェルメールはこの街並みに奥行きを生み出しているのです。

デルフトで最も重要な建物は、祖国の父、オレンジ公ウィリアムの墓所がある「ニウエ カーク(新教会)」です。フェルメールがこの教会の尖塔を明るい太陽の光に照らし出されるように描いたのは、当然のことと言えるでしょう。しかし実際には、尖塔はもう少し右側に位置しています。フェルメールはそれを若干中央寄りに描いています。

フェルメールは、黄色い絵の具のクリーム色の層で日差しを浴びた尖塔の側面を描き出しています。

塔の中には鐘がぶら下がっておらず、開いた鐘楼の窓からは曇った空が見えています。1660 年 5 月から 1661 年の秋にかけて、アムステルダムに住む鐘の製作者ヘモニーにより鐘の取り付けが行われました。それはちょうど、フェルメールがこの都市景観画を描いていた時期にあたります。

フェルメールの描いた都市景観画は実に写実的に見えます。しかし実際には配置を動かし、都合に合わせて街のあらゆる要素を変更しています。その一例として、ロッテルダム門の水面の反射があげられます。

元々、水面の反射は本物のようにもっと短く描かれていました。後にフェルメールは、この街を絵の下方で支え、視覚的に安定するように水面の反射を伸ばしたのです。

フェルメールは、「VM」というイニシャルでこの作品に署名を残しています。この絵の中では、署名は乗客用の荷船の側面に書かれています。

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