食事の作法を通じてあらためて知る、美しき日本文化

作成: 農林水産省

美しい日本文化を継承し続ける、ホテル椿山荘東京 料亭 錦水の女将に学ぶ、上質な料亭の空間での和食マナー体験をご紹介します。会席料理を楽しみながら、美しき日本食文化を再発見しましょう。

日本の食事 マナー講座(2020)農林水産省

きちんとしたお店で和食を食べる機会は、日本人にとっても意外と少ないもの。
和食器の使い方や美しいいただき方などの和食マナーの基礎や、和の空間でのスマートな立ち居振る舞いなど、日本人として知っておきたい作法を学んでみると、そこにあるのは感謝の気持ちと相手を思いやる心。

今回は、美しい日本文化を継承し続ける、ホテル椿山荘東京 料亭 錦水の女将に学ぶ、上質な料亭の空間での和食マナー体験をご紹介します。会席料理を楽しみながら、美しき日本食文化を再発見しましょう。

箸(2020)農林水産省

箸の使い方

日本食では、状況に応じてさまざまな箸を使います。
写真の箸は「利休箸」と呼ばれ、日本で「侘び茶」というお茶の形式を確立させ、日本文化に大きな影響を与えた千利休が桃山時代(1573年 – 1603年)に茶懐石用に考案し愛用した言われます。道具そのものの格よりも、心と心の交流を何よりも大切にお客様をもてなした利休の茶道から生まれました。

柳箸、祝箸は、一般的に使われる箸とは違い、特別な会食やハレの日やお正月などの祝い事に使われます。長さは末広がりとして、縁起の良い八尺。両箸が細くなっているのが特徴です。これは一方は人が使うため、もう一方は神様が使いためと考えられていて、一年の恩恵を授かるためにおせち料理を年神様と共にいただくという意味があります。

割り箸を割る時は、横に持ち、出来るだけ丁寧に割ります。写真の利休箸の巻き紙はできるだけ破らないように。箸置きが無い時は、巻紙を箸置きとして利用します。

箸の持ち方(2020)農林水産省

箸の正しい持ち方

上の箸の、三分の一の長さのあたりを、鉛筆を持つ様に支えます。下の箸は薬指の上に乗り、親指で支えます。感触に慣れたら、下の箸を動かさずに、上の箸を上下に動かしてみてください。

箸(2020)農林水産省

小皿(2020)農林水産省

料理は、器の上で箸を使い、一口大にしてから口に運びます。食べ物を口に運ぶときに手を添えるしぐさ「手皿」は、一見上品にも見えますが、実はマナー違反。器を持ち上げるか、懐紙がある場合は懐紙を取皿として代用し使います。

箸と和食器の持ち方(2020)農林水産省

箸を片手で持ち上げるのは少し難しいかもしれません。

もし片手に小皿を持っている状況で、箸を持ち上げたいときは、写真の仕草を参考にしてみましょう。まず箸は、きき手で持ちます。もう片方の手の人差し指と中指で箸を安定すれば、安心して箸を持つことができます。

小鉢を持つ(2020)農林水産省

お酒を注ぐ、注いでもらう(2020)農林水産省

海外ではあまり目にすることのない、お酒などの飲み物を注ぐ「お酌」の文化は、日本ならでは。「振舞い」や「おもてなし」は日本人の感性をあらわす素敵な言葉です。
 
日本の食事の席では、義理や恩のある方、お世話になる方に対して「お酌」をするというのはごく一般的なもてなしの礼儀です。それは日本人の「気配りの心」からきているのかもしれません。

「お酒がなくなったけど、もう少し飲みたいな」と思ったときに、タイミングよく笑顔で注がれるお酒は嬉しいもの。お酌をする際、される際には、軽く手を添えて。次の一杯が飲みたくなりますね。

日本の食事 マナー講座(2020)農林水産省

お椀(2020)農林水産省

お椀のいただき方

和食での料理の見せ方は、料理と同等に大切にされています。伝統的な工芸品である漆器は、多くの場合は日本の四季を表す梅、松、竹などの植物や、縁起物とされる動物など、自然のものが描かれています。日本料亭では季節によって器を変え、お客様をもてなし、目にも楽しませてくれます。

お椀を開ける際には、利き手でない手で椀を安定させ、蓋の高台を利き手の親指と人差し指で摘む様に持ちます。

お椀(2020)農林水産省

汁碗の開け方

お椀にふたが付くのは保温のためと、もう一つは吸物の香りを楽しむためでもあります。吸物を開ける際には、自分に最も近い側面を持ち上げます。そうすることによって、蓋の裏に描かれた絵を対面に座る人にみせながら、同時にお椀の中の料理の美しさや、開けた瞬間の香りを感じることができます。食べる際には、蓋は裏返して、器の横に置きます。

お椀(2020)農林水産省

お椀(2020)農林水産省

実は、お椀を持ち食事をする文化は世界中で日本だけ。

美しくお椀を持つには、親指以外の指をを揃えて下から高台を支え、親指はお椀の縁を支えます。手の平の上で包むようにお椀を持ったり、側面だけを支えて持つのはマナー違反ですので気をつけましょう。

お椀(2020)農林水産省

汁物を飲む際には、両手で持ち、香りを楽しんだらできる限り音を立てずに汁を飲みます。お箸を使う際は、箸先を直接お椀の中に入れて具と汁を交互にいただきます。

刺身(2020)農林水産省

刺身の食べ方

魚を生の刺身として食べるには、鮮度が命。日本は海に囲まれているため昔から新鮮な魚が手に入りました。侍がいた時代からある日本刀の優れた技術を生かし、切れ味の良い日本の包丁が作られたことからも、これほど刺身が日常的に食べられるようになった理由の一つです。

刺身とともに出てくるのは、鮮度が長持ちするためでもあり殺菌効果のある「しょうゆ」「わさび」「大葉」、消化を助ける「だいこん」などの添え物です。

刺身(2020)農林水産省

お刺身によくついてくるのは、枝のような穂ジソ。香りの良い薬味ですが、これは単なる飾りではありません。食欲を増進させるとともに、食中毒を防ぐ効果があるのです。

片方の手で茎の部分を持ちながら、もう片方の手で箸を使って実をしごいて醤油の中に入れましょう。この醤油に刺身をつけて、穂ジソと刺身を一緒にいただくと、紫蘇の上品な香りがより広がっていっそう食事が楽しめます。

刺身を食べるときには、わさびは醤油に溶かさず、刺身の上に少量のせていただくようにしましょう。刺身につけた醤油がたれるのを防ぐため、醤油の小皿は持ち上げてもよいです。

薬味(2020)農林水産省

もうひとつ、美しい薬味の食べ方をご紹介。これを知っていたらあなたも日本の食通になれるかもしれません。お刺身に添えられている「菊の花」。これも飾りではなく、刺身と一緒に食べられます。菊の花のエキスにはグルタチオン量を増やす効果があるといわれており、殺菌効果があります。花びらだけをつまんで醤油の中に入れ、刺身と一緒にいただくと、見た目にも美しく、シャキシャキとした花びらの食感や香りも楽しめます。 

昔の冷蔵庫などがなかった時代に生まれ、食中毒を防ぐ意味合いもあった薬味ですが、主役を引き立て美しさを高める名脇役です。

焼き物(2020)農林水産省

焼き魚の食べ方

焼き魚を美しく食べるのは、少し難しく感じるかもしれませんがコツに慣れたら簡単です。

尾頭付きの魚の場合は、頭が左、お腹部分が手間になるように出されますので、背骨に沿うように箸を入れ、切れ目をつけて魚の身をほぐします。上半分から、そして尾頭から右の順番で食べます。下半分もいただいたら、中骨をはずします。

茶碗蒸し(2020)農林水産省

茶碗蒸しの食べ方

茶碗蒸しをいただく際には、一口ずつスプーンですくっていただきます。茶碗蒸しは熱い状態で運ばれて来ることが多いため、注意が必要です。

蒸し物ならではの素材の色や形、香りを楽しみながらいただきましょう。

天ぷら(2020)農林水産省

天ぷらの食べ方

江戸時代には屋台で食べるのが一般的だったという天ぷら。衣の食感や風味を味わうためにも、揚げたてをいただきましょう。

刺身などの他の日本料理と共通しますが、複数の天ぷらが出される場合、盛り付けは味の薄いものが手前、濃いものが奥に配置されていますので、手前から順にいただきます。お塩とおつゆはお好みで。

和菓子(2020)農林水産省

和菓子のいただき方

見た目にも美しく可愛らしい日本の和菓子。
お茶の席にもかかせない和菓子には、黒文字(くろもじ)と呼ばれる楊枝が添えられます。黒文字を使って和菓子を一口サイズに切り分けて口に運びます。

ホテル椿山荘東京 料亭 錦水の女将 新盛さん(2020)農林水産省

和食をいただく際には、季節の喜びを表現した料理や香り、そして和食器が表わす四季など、様々な形で日本文化を深く経験できます。多くの年月を経て発展された日本料理には、私たちの想像以上に多くの意味が埋め込まれています。

日本には、もてなしのための用意を整える、「しつらい」という文化があります。しつらいは、「設い」とも「室礼」 とも書き、空間を整えてその場を飾る「しつらえる」という動詞に由来します。それは単にきれいに飾り付けるのではなく、掃き清めて水打ちした玄関から、お座敷へ向かう途中の露地に見られる手入れの行き届いた庭、そして季節に合わせて室内に飾られる軸や花、器など、季節の移り変わりを暮らしの中にも取り入れてきた日本人の、相手を思いやる気持ちから生まれた「こころよさ」が表現されているのです。

「文化を知るには食からである」という言い伝えがあるように、それは日本文化を最も良く表現しているといえるでしょう。日本文化の象徴である日本食の楽しみを、改めて体験してみてはいかがでしょう。

提供: ストーリー

協力:
ホテル椿山荘東京 料亭 錦水

写真:上原未嗣
執筆・編集:林田沙織
制作:Skyrocket 株式会社

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
もっと見る
関連するテーマ
奥深き日本の食文化を召し上がれ
日本の特徴的な気候や地形、そして先人達の知恵によって「日本食」は出来上がりました。
テーマを見る
Google アプリ