広重最晩年のシリーズ「名所江戸百景」(安政3-5年〈1856-58〉、その後に付された目録と2代広重画1枚を合わせ、合計120枚)の1枚。左の坂を葵坂といい、坂上の大きな榎の下にある辻番所で蜀葵を植えたためこの名がついたとされる。溜池から溢れた水が、この坂に沿って外濠に流れだしている。江戸城防衛のための武家屋敷のある場所だった。夜空に星と三日月、雁が飛んでいて、寒い冬の日であることがわかる。中央の二人は、三十日かけて鈴を鳴らし提灯を持って走りながら神社や仏閣を廻り、腕の上達を祈願する寒参りをしに行くところだろう。