銘の出典は、蘇東坡詩選『望湖樓醉書五絶 其一』蘇軾。「黒雲墨を翻えして未だ山を遮らず 白雨珠を跳らせて乱れて船に入る 地を巻き風来って忽ち吹き散ず 望湖楼下水天の如し」。手捏ねと箆削りという樂茶碗の基本的な造形要素を強く打ち出す手法を用いている。総体に掛けた備長炭の灰釉を基調に、薄い呉須釉が削り出し高台まで勢いよく掛けてあり、さらに口縁から高台脇までは運動感ある筆触でたっぷりと黒釉を施している。その一連の釉景は、まるで黒い雲から降る白い雨粒を強風が吹き払った後、ふたたび大空の色をたたえて広がる湖のようである。「破の破」シリーズの1点。