銘の出典は、自作詩『雨滴に洸をあつめて』の一節より。全詩を数行ずつ分け、それぞれ五碗の茶碗に付けている。本作は二行目「雲霓の旗は薄光を通し」をあてている。やや小ぶりな茶碗。手捏ねと箆削りという樂茶碗の基本的な造形要素を強く打ち出す手法を用いている。 口縁は篦で大胆に切り取っている。総体に備長炭の灰釉を掛けて、胴全体は幾何学的に呉須釉が施されている。さらに先端の細いもので削った1本の線が、ある種の緊張感を生み出している。他に、より鮮やかな呉須釉、緑釉、銅釉、黒釉を用いて多彩で印象的な釉景色を表現している。