上空にかかる白い靄が早春の冷気を感じさせます。太陽の穏やかな光が徐々に満ちてゆく中で、身体を丸くして安らかに眠っているネコの姿が愛らしい作品です。この作品の魅力は、春たけなわの華やかさではなく、新芽を宿したばかりのツツジと、いまだ眠りから覚めないネコを描くことで、内に秘めた生命力と、来たる季節を予感させるところにあります。御舟の鋭い感覚と発想が見事に響き合った作品です。速水御舟(1894-1935)は東京に生まれた画家です。41歳という若さで亡くなるまで、作風を変遷させながら常に新しい境地を目指しました。