新潟県魚沼地方で生まれた麻織物が越後上布です。豪雪地帯として知られるこの地方では例年2メートル以上の雪が積もります。苧績み(糸作り)から糸の準備、機の準備、機織りから仕上げと、すべての工程がこの雪国の湿めった空気の中で行なわれなければなりません。つまり、この冬の厳しい気候が、最高の夏用きものの生産にかかせないのです。越後上布の特徴は、経糸(たていと)も緯糸(よこいと)も、一本一本手作りした極細の麻糸を使っていることです。地機(じばた)という伝統的な織り機を使い、時に複雑な経緯絣(たてよこがすり)で文様が表現されます。材料の準備から織りに至るまで、これほど時間と手間をかけて作り出される織物は世界に類を見ません。