桜が咲き誇る道にはのれんや提灯が揺れる茶店が立ち並び、花見客が行き交っています。春の陽気は心地よいものですが、そろそろ日射しが強まり、紫外線が気になり始める頃。会話を交わしながら通り過ぎる後ろ姿の女性二人連れも、向かいから歩いて来る、大きな目がよく似た姉妹も、そして弟を抱き上げた父親に寄り添う少女も持っているのが日傘。どれも昔ながらの和傘ではなく、洋傘です。ちょうどこの作品が描かれた、明治40年代には国内で生産が進み、一般に普及していました。当時最先端のハイカラな日傘や、盛りの桜に似つかわしいようなお洒落なファッションからは、女性たちの華やいだ気持ちが伝わってくるようです。