年齢の異なる4人の女性が、春夏秋冬になぞらえて描き分けられています。琴の稽古の手を止めて、鳥籠の中の鶯のさえずりに耳を傾けているのは、桜や蝶の模様が華やかな着物姿の少女。夏姿の娘は団扇を持ちながら、金魚を眺めています。床の間に菊の花を生けたあと、短冊に歌を認(したた)めている女性は、萩や女郎花の裾模様が秋らしい着物をまとったしとやかな佇まい。雪景色の掛軸を見つめている、留袖に黒い羽織を打ちかけた女性は渋い着こなしが光ります。
松園の画家としてのデビューは15歳の時。この絵と同じ着想で描かれた作品「四季美人図」が展覧会で評価されたことがきっかけでした。琴や書をたしなむ姿は、伝統的な画題をヒントにしたものですが、一つの部屋に四季折々の装いを凝らした女性が集うという現実にはありえない構図は、彼女独自の趣向。着せ替え人形で遊ぶような感覚で、着物や帯、髪型の取り合わせを楽しみながら絵筆をとる、若き松園の姿が目に浮かぶ作品です。