岸駒(1756-1839)は、江戸時代後期の画家。加賀(現・石川県金沢市)に生まれ、貧しい生活を送っていたが、狩野派、南蘋派、円山派などあらゆる画風を学び独自の画風を築き、内裏や金沢城の障壁画の制作を任されるなど才能を認められ、また多くの門弟を育てた。本図は、番の鹿と岩にとまる鶴、その背後に松を描く。静と動、そしてそれぞれの視線が交錯する巧みな構図である。岩や松の肥痩のある輪郭線が岸駒の特徴のひとつで、淡彩を多用し落ち着いた雰囲気に仕上げている。「福禄寿」とは、幸福と俸禄と長寿命のこと。鶴や松は長寿の象徴で、鹿は禄と同音する。岩の下に生えるキノコは霊芝といい、食べると長生きするという。