日本の現代美術家。1933年東京に生まれる。ランボーを始めとするフランス近代詩に傾倒する一方で、鉱物、植物の形態にも関心を寄せる。独学で銅版画の制作を開始し、1956年には詩人・美術評論家の瀧口修造に推薦で、タケミヤ画廊(東京)で初の個展を開催。50年代後半より、銅版の腐蝕効果を用いた表現により、幻想的な印象の作品を制作し、国内外で版画展の受賞を重ねる。その後は、リトグラフ、インタリオ等の技法を手掛けるようになる。60年代半ばになると線描による具体的な形は姿を消し、鮮やかな色彩が画面に登場する。1979年、瀧口修造の死と前後して、デカルコマニー的な手法で鮮烈な色彩の流動感の溢れる油彩画の制作を開始する。
本作は、1989-90年に掛けて制作された「まなざし-疼く飛沫を辿れ」シリーズ77点うちの1点である。偶発性に依拠するデカルコマニーの技法を巧みにコントロールしながら、独自の抽象世界を創り上げている。