悪魔を降伏し、人々の煩悩を退け、わけ隔てなく仏の教えを広める不動明王は日本で深く信仰され、沢山の像が造られています。この絵に描かれているのは不動明王の脇に必ず控えている従者達。画面左で頭に蓮華の冠をつけているのが、矜羯羅(こんがら)童子で、小心者で従順な性格だとされており、穏やかで親しみある表情に描かれています。右側で甲冑を着て矢をつがえているのは制多伽(せいたか)童子で、憤怒の表情で表現されることが多いのですが、本作では極めて理知的な表情をしています。常に穏やかで、決して怒ることがなかったと言われる観山(1873-1930)自身が、二人の童子に反映されているかのようです。