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ヘレヴーツリュイスから出航するユトレヒトシティ64号

ターナー、ジョセフ・マラード・ウィリアム1832

公益財団法人 東京富士美術館

公益財団法人 東京富士美術館
東京都, 日本

19世紀前半のイギリスで色彩感豊かに水と空気を描き、後のフランス印象主義の先駆的な役割を果たしたターナーは、生涯、海を友とし海景を描き続けた。
本作に描かれた「ユトレヒトシティ64号」は、1688年のイギリス名誉革命の際、イギリス議会に招請されたオランダ提督オレンジ公ウィリアムがイギリスへ向けて出航した艦隊の先導艦。
つまり本作でターナーは、150年前の祖国イギリスを救った歴史的な出来事───オレンジ公ウィリアムが妻メアリ2世とともに共同統治者として王に即位(ウィリアム3世)し、権利章典が定められ近代議会政治の基礎が確立した───をテーマに、いわば「歴史画」の主題を制作のきっかけにして、歴史画の枠組みを超えた「船と海のジオラマ」を描いている。ただし、ターナーは想像だけで描いているわけではなく、船の構造にも詳しく、この絵でもかなり正確に17世紀の船を再現していると思われる。
曇り空で風が強く、天候が定まらないのであろう、近景では黒い波が大きくうねり、その向こうでは白い波頭が小刻みに動いている。全体的にグレーとブルーの寒色系の色調に重く沈んでいる海。そこに左上方から海上に向かって斜めにうす日が差し込んでいて、風を受けた帆船を淡いオレンジ色に染めている。左から右へ、上から下へ、重苦しい海に動きが加わり、寒色の中にわずかな暖色を見いだすことができる。ここには、海、空、雲、光、風、大気、帆船といったターナーの絵画の主要なモチーフを見ることができる。
この作品は1832年のロイヤル・アカデミーの展覧会に出品されたが、そこでちょっと面白い「事件」が起きている。展覧会の直前の最後の手直しが許される日に、隣に展示された好敵手コンスタブルの絵に刺激を受け、よりいっそう効果を上げるため、中央よりやや右の海上に、最後に赤いブイを描き入れたというのである。

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