日本の造花の歴史は古く8世紀に編纂されたと考えられている『万葉集』にはすでに造花を詠んでいると思われる和歌があります。有職造花とは平安時代に宮中の季節の行事のために糸や布を使って作られた造花のことです。その伝統を受け継いだ最後の「雲上流」有職造花師が京都にいます。
有職造花が飾られる代表的行事は「五節句」です。「人日」、「上巳」、「端午」、「七夕」、「重陽」は、かつて中国から伝わり、1616年に幕府の制令により確定しました。
「上巳」は桃の花が咲く季節から「桃の節句」とも呼ばれます。かつては子供の健康と厄除を願う日でしたが、現在は女児の日とされています。平安京の紫宸殿は北を背にしており、左には「左近桜」が、右には「右近橘」が植えられていました。それと同じように、雛人形は南向きに置かれ、両側に桜と橘が飾られます。桜を太陽が昇る東に伸びていくように作るのも雲上流のこだわりです。