五節句のひとつで、菊に長寿を願う重陽の節句をモチーフとした意匠の着物。一定の方向・間隔で模様が繰り返されており、型紙を用いた型友禅染の技法によることが分かる。型友禅には染料を含んだ刷毛で色を摺り込む摺友禅と、化学染料を混ぜた糊(色糊)を置いて蒸すことで色を定着させる写し友禅があり、本作品は後者にあたる。写し友禅は職工の技量の差が出にくく、効率的で均一な品質を保てる技法として広く普及した。とは言え、このように繊細で色彩豊かな表現には、数十枚もの型紙を使い分ける熟練した技術を要したことは想像に難くない。