腰を境に身頃の上下で模様を変える模様構成は、元禄(1688-1704)頃に女性の帯幅が広くなるとともに登場した。この小袖は上下を雲取で紅白に染め分け、紅地の上半身には『源氏物語』の各巻名の一部を刺繍し、扇面、松皮菱、雪輪の形に白く染め抜いた中にその一場面を墨絵で描いている。下半身には「須磨」や「明石」の巻を連想させる海辺の風景を、色鮮やかな友禅染と刺繍で表している。墨絵で描かれた『源氏物語』の場面は、絵画における源氏絵の表現との共通点が指摘されており、小袖制作の際に参考にされたことがうかがわれる。
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