この銃には、あるエピソードが伝わっている。黒田長政と宗茂との間で鉄砲と弓の優劣論が起こり、長政は銃の利点を挙げて弓の全廃を主張し、宗茂は弓と鉄砲のそれぞれに長所と短所があると反論した。そこで笄を的に長政が銃、宗茂が弓で競い、勝者が敗者の武器を取り上げることとなった。その勝負で宗茂が勝ったため、長政からこの火縄銃「墨縄」が贈られたが、宗茂からも弓を長政に贈り返したという。銃底には「行きやらで、山ぢ暮らしつ時鳥、今一こえのきかまほしさに 墨縄」と銘が彫られている。墨縄とは大工が直線を引くために使用する道具であるが、そのように玉がまっすぐ飛ぶことからついた銘であるといわれる。