速水御舟(1894~1935)は東京生まれ。わずか40年の生涯において、同じ画家とは思えないほど多彩な画風を発揮しました。本作では何枚もの紙を継いた大画面を活かし、大きな山を余すところなく描いています。「山頭に翠明らかなり」と名付けられた通り、暗く大きな墨の山には青々とした木々が、細やかな点を連ねて表され、一部に丹朱という赤い顔料を用いることにより、緑樹から紅葉へと移ろう季節感を捉えています。下方では朝の冷え込みにより真っ白な煙霧が生まれています。自然の美が見事に表現された本作は、21才の御舟が初めて挑んだ大作で,再興第二回日本美術展覧会へ出品されました。