戦争そして戦後
太平洋戦争はこの業界に大きな打撃を与えました。1938年には、前年に始まった日中戦争のため、鉄統制令が施行されます。あらゆる金属が回収される中で、鉄瓶製造も禁止され、職人たちも軍需産業への移行を余儀なくされる事態となりました。
しかし、伝統の火を守り抜こうとする地元の有志が南部鉄瓶技術保存会を結成し、辛うじてこの危機を乗り切り、南部鉄器の伝統を戦後に継承することができました。
終戦後は、生活様式の変化や、アルミニウムやステンレスの製品に押されて需要は減り、南部鉄器は一時衰退しましたが、1975 年には「伝統工芸産業振興法」という法律ができ、南部鉄瓶はその第1号の国の指定を受けた伝統的工芸品となりました。
近年では、現代的なデザインを取り入れたティーポットが海外で人気を博し、また実用的な調理器具としてもその良さが見直されてきています。
400年の歴史と伝統の技術に支えられた南部鉄器は、決して派手で目立つ存在ではないけれども、質実剛健で、かつ親しみやすい温もりを備えています。
そのたたずまいは、厳しい気候風土に耐え、素朴で粘り強い岩手の人々の姿を思い起こさせるのです。