向かって右の「もの詣で」は、114年ぶりに再発見された作品です。高く結い上げた島田髷、凝った細工の簪や櫛、下唇に高価な紅を濃く差した化粧という晴れの日の装いを凝らした令嬢は、その健やかな成長へのお礼参りに向かうのでしょうか。箱入り娘の彼女にとって、きっとお供を連れて出掛ける初めての「もの詣で」。緊張と不安の面持ちで、傘を差し掛ける侍女の手を強く握りしめています。華やかな模様の振袖は華奢な身体にはまだ少し大きかった様子。肩のところで縫い上げて着ている様子が初々しく見えます。大人の女性の仲間入りをしたばかりの、可憐な娘姿を見事に描き出した蕉園初期の代表作です。明治40年(1907)第1回文展で見事3等賞を受賞しました。