戦後のフランス現代絵画を代表する画家。1919年フランス、アヴェイロン県ロデスに生まれる。幼少の頃から古代ケルトの遺跡やロマネスク寺院に囲まれて育ち、美術へ興味を抱くようになる。1938年のパリ旅行を契機に、独学による絵画制作を開始する。1941年モンペリエの美術学校に学ぶ。1948年にパリのアトリエを構える。この頃より力動的な黒い幅広の筆線を用いた抽象絵画を描き始める。1958年に来日し、日本庭園や寺社をめぐり、芸術家や書家と交流する。1979年 黒一色のマチエールで、光の反射を利用した絵画の制作を開始する。作品には完成年月日を記し、それをタイトルとしている。絵画の物質性にこだわりながら、黒を基調とした幅広の筆触による構築的、力動的な抽象絵画の世界を展開している。
黒一色にしか見えない本作をよく見ると、溝状の縞目模様が画面全体を覆っていることに気付かされる。無論、この黒は影や闇を表現したものではない。この重厚なマチエールの絵画からは、一切の意味性が剥ぎ取られている。スーラージュの絵画は、観る者と絵画の間に溢れている光を画面に取り込み、その存在を現前化させるために描かれた絵画なのだ。