永平道元禅師行状之図 双幅 １ 全体図

日本に曹洞宗を伝えた道元禅師(1200～53)の生涯を描いた絵伝。道元の伝記は古来さまざまなものが著された。江戸時代後期になると、一般の人に平易に伝えることを目的とした挿絵入りの伝記である、『訂補建撕記図会』や『永平高祖行状記』が刊行された。こうした絵伝の登場は、道元禅師五百五十回遠忌(1802年)と深く関わっている。掛軸装の行状図は、多くの人々の前で道元一代記を説くことができる利点を持ち、檀信徒への普及効果に大きな役割を果たした。
本行状図は、木版画に彩色を施したものである。当時多くの版が摺られたと考えられるが、本品は表具・色彩の劣化が少なく、良い保存状態で伝えられている。 

　一巻目(左側)〈1図～23図〉　描写期間：正治2年～安貞元年(1200～1227)
誕生に始まり、母の死を契機とする比叡山での出家、比叡山を下りて建仁寺の明全(みょうぜん)の門下に投じる。明全とともに南宋に渡り、4年後に天童山の如浄のもとで大悟した。最後の23図目は帰国の前夜、白山権現の助力を得て一晩で『碧巌集(へきがんしゅう)』を写したという、一夜碧巌の伝承である。