日本は、その国土からほとんど鉱物質の宝石を産出しません。しかし、四方を海に囲まれたこの国は、世界に冠たる美しいサンゴ――その稀少性から「宝石珊瑚」の名で呼ばれる海の宝石の主産地として知られています。 日本初の珊瑚漁が行われた土地であり、今もの最大の生産量を誇る高知は、日本国内のすべての珊瑚原木の取引が行われるなど、珊瑚産業の中心地です。その地理的な優位性のもとで花開いた高知の宝石珊瑚細工は、世界的にも類例のないもの。珊瑚という珍奇な資源を用い、その美しさを見つめ、生かして表現されるこの工芸は、新たな試みを加えながら、海のような、広く豊かな芸術世界を展開しています。