日本を代表する現代美術家。1955年東京都に生まれる。1977、78年にかけてロンドン滞在。1980年武蔵野美術大学卒業。1982年初個展を開催。日本のニューペインティングの旗手として注目を集める。その後は、廃材を集めたコラージュやオブジェ等の制作に取り組む。アートのみならず、デザイン、音楽、著述の分野での活躍も注目されるようになる。1988年に愛媛県宇和島市に制作拠点を移す。1995年ヤマタカEYEとユニット「パズルパンクス」を結成。2006年「大竹伸朗 全景 1955-2006」展(東京都現代美術館)を開催。2012年「ドクメンタ13」(カッセル・ドイツ)、2013年「第55回ヴェネチア・ビエンナーレ」(イタリア)に出品。その活動は、アートの枠を超えて、若者を中心に国内外の幅広い層からの支持を獲得している。
シュルレアリストやカラーフィールド・ペインティングの画家たちの手付きを想像しながら、本作に向き合ったところで、製作者の手つきを追体験することはできない。抽象絵画のように見えるこのイメージは、絵具によって描かれたものではなく、ポラロイドのフィルムが像を生み出す仕組みをコントロールして現出させたイメージだからである。このプラスチック樹脂で覆われた光沢のあるマチエールが、「網膜」シリーズの最大の特徴である。