デュモンはパリで生まれたが、3歳の時家族とともにルーアンに移住し、人生の大半をそこで過ごした。その町には1895年から1940年にかけてゴチック様式の荘厳な大聖堂やセーヌの美しい谷間を描く風景画家のグループが存在した。このグループはエコール・ド・ルーアンと呼ばれた。デュモンもその一人である。デュモンの画風は印象派の流れをくむ同グループの影響を多少は受けるものの、初期の作品は当時流行のフォーヴィズムに近いものがあり、この絵のように大胆で強烈な黒を使い、光と影のコントラストを浮き立たせているのが特徴である。しかし、1909年にルーアンの画廊で初個展を開き、同じ年に「ノルマンディー現代画家協会」の前身である「グループXXX」を創立して、ジャック・ヴィヨンやマルセル・デュシャンなどの前衛画家や詩人、作家たちと接し、キュービズムに傾斜していった。1912年にはアポリネールの援助を受けて、ヴィヨンやピカビアらとともにパリで「セクション・ドール」誌を創刊し、同名の展覧会を開催、その後もサロン・デ・ザンデパンダンやサロン・ドートンヌに出品を続けるなど精力的な活動をした。