京都市出身の西村五雲(1877-1938)は岸竹堂、竹内栖鳳に学び、動物画の名手として活躍しました。大正時代に体調を崩して以降、小画面の作品の制作が多くなったと言われていますが、髙島屋主催の展覧会「珊々会」へ出品された本作は、大画面の力作。琵琶湖畔の砂浜に着想を得た作品です。画面では、漁師たちが立ち去った隙を狙ってか、大きな魚籠に一匹の鳶が羽を休めています。周囲を警戒する様子もなく、獰猛な性格に似つかわしくない穏やかな表情を見せています。鳶をはじめ様々な動物を自宅で飼育し、愛情を込めて観察し続けた動物画の名手・五雲ならではの表現です。