蹄斎北馬 (1770-1844)は、北斎の弟子の一人。寛政10年(1798)頃に北斎門に入り、最初は絵本の挿絵画家として活躍するが文政期(1818-)に入ると肉筆画に専念した。右幅は舟の上で月見に興じる図。一人の女性は空を見上げ、もう一人は水に杯を浸けている。水面に映った月を掬おうとしているのだろうか。背後の舟には男性ふたりと船頭が配される。中幅は満開の桜の下の美人。かがむ女性はタンポポとツクシを手に取っている。遠景には海が広がり、多くの船が見える。左幅は室内から外の雪景色を見やる美人。襖絵には梅が描かれているが、よく見ると立ち姿の女性の着物も梅柄だ。本図は、蹄斎独自の画風が確立された天保期(1830-44)の作と思われる。