木島櫻谷(1877-1938)は京都に生まれ、京都で活躍した日本画家。画面左側の太い幹は桜の木で、花そのものは描かれていませんが、地面に散り敷く花弁が満開の様子を想像させます。茶店では、幕を廻らし、武家の一行が休息中です。そこから離れて、馬方はひとり腰を下ろし、飼い葉桶の草を食む黒い馬を気に掛けています。春の息吹を感じ取ろうと、地面に顔を寄せる白い馬の伏せた目が実に優しく描かれています。この作品は金箔を画面の裏に貼った「裏箔」という手法を使っており、絹目を通り抜けた輝きは淡く、やわらかな陽光を表すのにふさわしいといえるでしょう。