アンディ・ウォーホルと共に、アメリカン・ポップ・アートを代表する美術家。1923年ニューヨークに生まれる。1939年にアート・スチューデンツ・リーグ、1940年はコロンバスのオハイオ州立大学で美術を学ぶ。1943年から1946年は、兵役でヨーロッパに駐留する。1961年に漫画を拡大して描いた最初の作品《見ろよミッキー》を制作する。1962年レオ・キャステリ画廊での初個展で高い評価を得る。1964年以降は「鏡」や「建築遺跡」、「ブラッシュ・ストローク」などを主題にした作品を手掛け、筆触を感じさせない印刷の網点の仕組みで描いた油彩画は、コミックに過ぎなかった大衆的なイメージを見事に「ポップ・アート」へと昇華させている。
リキテンスタインは、本作が制作された1972年から74年に集中して静物画を描いている。17世紀のオランダで盛んに描かれた「静物画」は、食卓のみずみずしい果物や光沢のある食器を写実的に再現描写した重厚な油彩画だが、それがリキテンスタインの手に掛かると、緻密な明暗法や遠近法は見る影もなく、平易で明快なイメージの静物画に仕上がっている。リキテンスタインの絵画は、美術史に対する独自の思考が制作の源泉になっており、静物画以外にも、印象派やキュビスム、未来派などのイメージを引用した作品を多数制作している。