福井県越前市の越前和紙の里。ここは不老(おいず)、大滝、岩本、新在家、定友の五つの集落で形成され、水源豊かな山々に囲まれた「五箇」として知られます。西に国府が置かれた武生盆地、山一つ超えた南には古墳群を有する味真野を臨み、越前でも早くから開発の進んだ地域でした。紙の神様、いわゆる紙祖神の古い伝説を持っています。それは、後の継体天皇が越前の地にいた頃、岡太川の上流に女神と思われる美しい姫が現れ、「この村里は谷間であって田畠少なく生計を立てるには難しいが、清らかな谷水に恵まれているから紙を漉けばよいであろう」と、自ら上衣を脱ぎ、竿にかけ、紙漉の技を教え、村人が名を尋ねると、岡太川の川上に住む者と答えただけで姿を消したというものです。以後、村人は女神を岡太川上流の岡太神社で紙祖神・川上御前としてあがめました。1923年にはその由緒の古さから大蔵省印刷局抄紙部に分霊が祭祀され、全国の紙業界の総鎮守となりました。