伝統的に越後上布の織り手(織子)は、機屋の注文を受けて冬季に自宅で機を織ります。越後上布に使われる機は、過去、居座機ともよばれた後腰帯のついた地機です。越後地方では、後腰帯はシマキと呼ばれています。毎回機に上がる時、この後腰帯を腰に当て、紐でをカラスグチという布巻棒の両端に巻きとめます。カラスグチは斜めにならず、まっすぐ巻くことがたいへん重要なのです。
織る際、上糸は常に中筒によって上げられているので、織り手が腰を引いて、経糸に張力をかけると上糸開口が自然に開きます。そこで杼を通して打ち込みます。下糸を上げるために、綾棒に掛けている糸綜絖を上げる。綾棒はマネキという機の部分につながり、マネキは機の後ろに紐で織り手の足首にかけられている。糸綜絖を上げるためには経糸をゆるめなければならないので、腰を少し前の方に動かします。紐に掛けている足首から膝を徐々に曲げながら、紐を前に引くと、同時にマネキが後ろに回転し、綾が上がる。逆開口が開いたら、杼を通して打ち込む。
越後で使う杼は刀杼であり、糸を通すだけではなく、緯糸を打ち込む機能をも持つ。したがって、杼が布幅に入ったときに両手で両端をつかめるように出来ており、杼の長さは布幅よりも長くなっている。杼が真ん中の位置にくると、そこで止めて、両手での両端を持ち、1、2回打ち込む。次は、両手で筬の真ん中を持ち、布に平均して1、2回打つ。筬には框はないので、まっすぐに打たなければ、織り前の布が斜めに織り上がってしまう可能性があります。