デリケートな味。淡く微妙な味。舌に広がるような、舌全体が包み込まれるような味。長く余韻の残る、持続性のある味。唾液が出て口のなかが潤うような感覚……。うま味を体験し、その味を理解したシェフたちは、うま味の特徴をこのように表現しています。 うま味の3つの特徴を取り上げてみましょう。舌全体に広がる うま味は「舌に広がるような、舌全体が包み込まれるような味」と表現されることが多くあります。食物を食べるとき、わたしたちの舌は動いています。このような自然な状態で、甘味や塩味、うま味をもつ味物質を溶かした水溶液を、ほんの一滴スプーンの背からなめとったときに、舌のどの部分で味を感じているかを詳細に調べた研究があります。その結果、うま味は甘味や塩味よりも広い範囲で感じられることがわかりました。持続性がある うま味物質であるグルタミン酸とイノシン酸、食塩、ワインの酸味成分である酒石酸(しゅせきさん)の溶液をそれぞれ一度口に含み、吐きだしてから口のなかに残る味の強さを比較した研究があります。その結果、塩味と酸味はすぐに味が弱くなってしまうのに対して、うま味は数分間にわたって長く味が残っていることがわかりました。このことから、基本味のなかでもうま味は食物の「あと味」に大きな影響を及ぼしていると考えられます。唾液の分泌をうながす 酸味が唾液の分泌をうながすことはよく知られていますが、実際にはうま味のほうが唾液の分泌をうながし、その効果は長く持続することが明らかになっています。
また、酸味によって分泌された唾液は水っぽく、さらさらとしていますが、うま味によって分泌された唾液はそれよりも粘性があり、口中を潤す効果が高いことがわかっています。
もしも唾液がなければ、味を感じたり、スムーズに食物を飲み込んだりすることができません。うま味はその機能のカギを握っているのです。