川合玉堂(1873-1957)は、愛知県一宮市に生まれ、京都に出ると幸野楳嶺に師事しました。23歳の時に上京し、横山大観らと日本美術院に参加。その後は官展で審査員をつとめ、東京美術学校教授、帝室技芸員に任命されるなど、東京画壇における中心的な役割を果たしました。本作は、春夏秋冬を主題とした四幅対の大作です。《長閑》では、うららかな春光の中、石臼をつくる石工の姿を、《驟雨》では、突然の風雨に耐え、漁夫が懸命に小舟を操る姿を、《斜陽》では、秋の夕陽に照らされて穏やかな水面を進む2艘の船を、《吹雪》では雪に閉ざされた駅路の風情をそれぞれ見事に描き分けています。四季折々の風景を描くのではなく、自然とともに生きる人々の暮らしぶりまでも表現され、玉堂の優れた観照の眼が感じられます。1930年にローマで開催された日本美術展覧会に出品された意欲作です。