菊池芳文(1862-1918)は、大阪府大阪市に生まれ、竹内栖鳳らと共に幸野楳嶺に師事しました。「師匠の筆跡のかすれまで真似させる」という厳しい指導を乗り越えた彼は、栖鳳と同じく「楳嶺四天王」に数えられています。京都の観光名所を、四季折々の姿で写しとった作品です。右から渡月橋がかかる大堰川の両岸に桜が咲き誇る様子を描く「嵐山桜花」、糺の森にかかる朝霧が陽光に輝く中を杜鵑が高く鳴いて飛び過ぎる「下賀社鵑」、この世に阿弥陀如来の浄土を顕現させた宇治の鳳凰堂を、さらに紅葉が荘厳する「平等院紅葉」、前夜に降り積んだ新雪に照り映える「修学院雪朝」が表現され、繊細に季節の情趣が見て取れます。近代京都画壇に属した画家の技の水準を今に伝える力作です。