人は見かけによらない

フリーダ カーロのワードローブ

Frida Kahlo, June 15, 1919(1919) - 作者: Guillermo KahloMuseo Frida Kahlo

フリーダ カーロのワードローブ

フリーダ カーロは 1907 年にメキシコシティで、ハンガリー系ドイツ人の写真家である父ギリエルモ カーロと母マティルデ カルデロン イ ゴンサレスの娘として生まれました(母のマティルデはアオハカでスペイン人の母とメキシコ人の父の間に生まれました)。フリーダ カーロは芸術家として、その絵画作品を通じて彼女自身について多くのことを語っているだけでなく、外見やスタイルを通じて私たちの心に強い印象を残しています。

CorsetsMuseo Frida Kahlo

フリーダ カーロについては研究しつくされたと思われていましたが、2004 年 4 月、フリーダ カーロの生家である「青い家」で彼女のワードローブ(衣服などの私物)が発見されました。彼女のワードローブと身の回りの品は、夫であるメキシコ人壁画家ディエゴ リベラと、その後パトロンであり友人のドロレス オロメドの特別な要望により、家の上階にあるフリーダ カーロの部屋に隣接した白いタイル張りのバスルームで、50 年以上にわたり保管されていました。民族衣装や現代的な衣服、アクセサリー、医薬品、整形外科用器具など 300 点ほどが発見されました。

Installation view of Appearances Can Be Deceiving exhibitMuseo Frida Kahlo

人は見かけによらない: フリーダ カーロのワードローブ 展は、これらの品々を初めて展示し、カーロが自身のアイデンティティをどのように構築したのかについて研究したものです。本展示では、身体障害、伝統、ファッションやドレスを通じてカーロが構築したスタイルに焦点を当てています。また、カーロの個人的なスタイルが、世界的なアーティストやファッション デザイナーにとってインスピレーションの源泉であり続けている様子もご紹介します。

急性灰白髄炎患者のためにデザインされた松葉杖(カナディアン クラッチ)(1954 年頃)

金属製の義足。絹糸で中国風モチーフが刺繍された赤いレザーブーツで補強され、サーモン色のリボンの上に 2 つの金属製の鈴が下がっています(1953 年)。

My Dress Hangs There(私のドレスがそこにかかっている)

フリーダ カーロにとって、テワナの民族衣装は、脚の障害を隠すための身体に合った服というだけでなく、自身を融合させたものとして第二の皮膚のように着こなしていました。フリーダ カーロは、衣服の隠喩的な媒体としての役割の中に存在すると同時に外見的にわかりやすい記号論的な質を感知することができました。

Installation shot of Appearances Can Be Deceiving exhibitMuseo Frida Kahlo

自身のアイデンティティを強めるために民族衣装を利用することで、政治的信条を再確認し、身体の不完全性を隠し、親から受け継いだものや自らの生い立ちの上にアイデンティティを構築していきました。

Juchiteco ´face huipil´(1942)Museo Frida Kahlo

フリーダ、彼女のスタイル: サーカスはどこ?

複雑な手刺繍が施されたドレスを着て、三つ編みの髪型に花飾りをつけるという彼女の決断は、まったくの個人的な選択だったと考えられています。それは一方では、おそらく母親と娘の関係に根差した自己肯定の探索であり、もう一方では、芸術の世界に自分自身を位置づける直観力でした。当時の女性芸術家は自分の作品を実力で認めてもらうために闘っており、彼女の場合は、著名な夫とは異なる自立した人物として認知される必要がありました。

Chinese blouseMuseo Frida Kahlo

自らのアイデンティティを定義し文化的遺産と政治的信条を表現するために象徴的なドレスとしてカーロが選んだのは、テワナの民族衣装でした。ワードローブの大部分は、メキシコのアオハカやその他の地域の伝統的なアイテムで構成されています。しかし、グアテマラや中国の民族衣装、ヨーロッパやアメリカのブラウスの興味深いコレクションも含まれています。

Installation shot of Appearances Can Be Deceiving exhibitMuseo Frida Kahlo

好奇心のキャビネット

急性灰白髄炎(ポリオ)にかかった日から亡くなる日まで、フリーダ カーロは 22 回の外科手術を受けたため、崩壊しそうな身体を抱えて生きていました。この分裂しそうな身体が、形状とアイデンティティのユニークな融合を通じて、彼女自身と彼女が受けた制約の物質的な表現へとつながっていきました。

Blouse(1938)Museo Frida Kahlo

テワナのドレスは、それを純粋に表現したものです。凝った装飾の上半身に置かれた幾何学的な重点、四角いチェーン ステッチが施された丈の短いブラウス、ドレスが暗示するジェンダー的、政治的表明。フリーダとテワナのドレスは、アイデンティティ、美しさ、デザインの完璧な融合として、一体化していました。

BlouseMuseo Frida Kahlo

テワナ ドレスの装飾は身体の上半身に集中しています。上半身に集められたチェーン ステッチ ブラウス、花、凝ったジェリー、イヤリング、ネックレス、リングはフリーダの上半身に注目を集めることで彼女自身を再構成し断片化して、見る人の意識を脚や下半身から逸らす効果がありました。
ウィピルの持つ丈の短い四角形の幾何学的な構造は、彼女の背を高く見せるのに効果的でした。座ったときは布地がウェストの辺りでまとまらないため不快にならず、それ自体に注目を集めることができました。

ShawlMuseo Frida Kahlo

視覚芸術家として、また、世界に提示してきた身体的イメージを形成するために多くの時間とエネルギーを注いだ者として、フリーダがテワナの民族衣装のもつ着映え効果を意識していたことは明らかです。

NecklacesMuseo Frida Kahlo

フリーダが常に、自分の感覚やリアリティと、自らのアイデンティティを探して定義しようとした努力からインスピレーションを得ていたとすれば、今回の展示は、彼女の心地よさ、強さ、個人的な安心感のツールや起源としての、ドレスの心理的効果を証明するはずです。その効果は、極めて強力なものでした。

BootMuseo Frida Kahlo

Right boot in red leather with grosgrain ribbon laces and embroidered with Chinese motifs worked in silk thread. A metal bell hangs from a royal blue silk velvet ribbon, ca. 1952.

Book-locketMuseo Frida Kahlo

フリーダ カーロとディエゴ リベラの写真を収めたブック型ロケット。花模様が型押しされ、2 房の毛髪が下がっています。フロントカバーはワイン色のベルベット デボア地で裏打ちされています。

ShoesMuseo Frida Kahlo

黒いスエード革の靴。かかとが幅広く、黒いシルクのひもで結ばれています。前側の露出は意図的なものです。

Sunglasses(1950)Museo Frida Kahlo

サングラス(1950 年頃)

Prehispanic necklaceMuseo Frida Kahlo

アクアグリーン ストーンの丸いビーズで飾られた古代のネックレス

CorsetsMuseo Frida Kahlo

コルセット: アートとアバンギャルド

身体の治療を受けていたカーロにとって、コルセットは支えであり必要なものでしたが、抵抗を表すものでもありました。コルセットによって病弱な人として自らを定義するだけでなく、自分のコルセットを装飾することにより明示的な選択として表現し、外見の構成に不可欠な要素として取り入れました。

Corset(0) - 作者: Frida KahloMuseo Frida Kahlo

フリーダ カーロが描いたコルセット

Marxism Will Give Health to the Ill(1954) - 作者: Frida KahloMuseo Frida Kahlo

Marxism Will Give Health To The Sick(マルクス主義は健康を病人にもたらす)(1954 年)

The Freckles(2004) - 作者: Jean Paul GaultierMuseo Frida Kahlo

伝統的要素: レース、花、白

多くのデザイナーが、カーロを解釈するための出発点としてコルセットに着目しています。彼女のコルセットは、まさに身体の脆弱性の象徴であり、困難に耐え抜く性格を支える存在でした。カーロがコルセットを医療用の器具としてだけでなく様式化して作品に取り入れる試みに利用した事実からヒントを得て、彼女のスタイリングがファッショナブルな衣服に変換されました。川久保玲、ダイ リース、ジャン ポール ゴルチエは、カーロがかつて個人的かつ入念に絵画を創作したのと同様に、それぞれのスタイルの個性を活かして、細部まで丁寧に工夫をこらした作品を制作しました。

ジャン ポール ゴルチエ
The Freckles(染み)。肌色のシルク製でフリルと茶色い斑点模様のある短い丈のドレスの上に、サーモンピンクの整形外科用コルセットを着けています(2004 年春夏コレクション)。

Corset and skirt(2012) - 作者: Dai ReesMuseo Frida Kahlo

これらのデザイナーたちは、ファッションと障害の間にある類似性をデザインしており、前衛芸術に描かれたカーロのコルセットという忘れがたいイメージを通じて、2 つの概念を融合させています1。
デザイナーたちは、ポストモダニズムの脱構築を完璧に表現するカーロのイメージにどのような価値を見出すのかについて、それぞれの立場を取っています。ゴルチエの場合はバーレスク(風刺劇)のようなエキゾチシズムを創造し、川久保玲の場合はほとんど宗教的なニュアンスを持たせ、リースの場合は、人体解剖学を取り入れています。

1 『Spectres: When Fashion Turns Back, Londres』: ジュディス クラーク著、V&A Publications 刊、2004 年、p. 40

ダイ リース
天然のなめし革とワックス加工の綿素材で作られたコルセット ボディス。平面パターンと手作業の湿式成形(キュイールブイ)で構築されています(2012 年)。

Dress(2010) - 作者: Riccardo TisciMuseo Frida Kahlo

リカルド ティッシ(ジバンシー)

カーロのスタイルは現代にも通じるものとして称賛されています。ティッシのコレクションには、フリーダの家族の伝統や障害を通じて再解釈した形で、彼女の自意識が明確に示されています。ティッシの扱う素材やモチーフを通じて、彼女の苦しみの記憶が表現されています。レースの花模様は伝統への言及であり、生と死の象徴でもあります。繊細な刺繍が施された、骨盤の部分が覆われていない細身のシルエットは、脊椎の痛みとの生涯にわたる闘いだけでなく、
交通事故についても思い出させます。カーロは事故の後遺症で子供の産めない体になりました。ジャケットは翼のように見えます。カーロの作品には、特にひどい痛みに苦しみ、自分の身体から逃れることができたらという希望に執着しているとき、鳩の翼が繰り返し登場しました。

リカルド ティッシがデザインしたジバンシーのオートクチュール

レースとシルクサテンのモチーフを刺繍した赤いチュールのジャンプスーツ、レースのアップリケを刺繍した伸縮性チュールの肌色ボディスーツ、ハンドカットの同色フリンジを刺繍したシルクガザール地のジャケット(2010 年秋冬コレクション)。

Appearances Can Be Deceiving(1934) - 作者: Frida KahloMuseo Frida Kahlo

Appearances Can Be Deceiving(人は見かけによらない)

本コレクションではフリーダが私的に描いた絵画「Appearances Can Be Deceiving(人は見かけによらない)」も公開されています。今回の展示のきっかけとなった作品で、2004 年に彼女のバスルームが開けられたときに発見された貴重な絵画です。この詩的な絵画は、カーロと身体との親密な関係を示しており、コルセットとドレスが一体化しています。フリーダの人生と作品には、情熱、個人的遺産、政治的信条、障害への現実的対応が併存していました。

Frida Kahlo Museum

The Frida Kahlo Museum, which was the house where she was born, lived and died, is located in the old neighborhood of Coyoacan, in Mexico City. 

Las apariencias engañan: El diseño de la exposiciónMuseo Frida Kahlo

提供: ストーリー

Dirección General: Carlos Phillips

La Dirección de esta exposición estuvo a cargo de:
Hilda Trujillo Soto

Coordinación Ejecutiva: Alejandra López
Curaduría e investigación: Circe Henestrosa
Diseño museográfico: Judith Clark
Fotografías: Miguel Tovar
Promotores del proyecto: Eva Hughes, Kelly Talamas, Sue Chapman Producción de la exposición: MDM Props Ltd, con agradecimiento especial a María Katehis
Producción de los maniquíes: La Rosa, Milano, con especial agradecimiento a Lella Sciortino
Estilización de tocados y maniquíes: Ángelo Seminara
Asistente de estilización de tocados y maniquíes: Anna Fernández, Akira Yamada
Asistente curatorial: María Elena González, Daniela Monasterios
Asistente de museografía: Lucie Layers
Conservación y restauración de textiles: Renato Camarillo
Manejo de archivos: María Elena González, Alejandra López, Mariana Cantú
Diseño gráfico:Charlie Smith Design
Edición de contenidos: Alessandra Grignaschi, Dave Ellison
Revisión de contenidos: María Luisa Cárdenas
Programa educativo: Luana López, María Luisa Cárdenas
Difusión: Patricia Cordero, Maricarmen Rodríguez
Coordinación de patrocinios:Ximena Gómez
Apoyo en montaje: Karla Niño de Rivera, Lucía Enríquez
Contenidos pedagógicos: Beatriz Ruiz, Bárbara Barragán
Material de apoyo del proyecto educativo:Luisa Fernanda Matute, Karina Bermejo
Administración: Laura Zavala, Gabriela López
Coordinación técnica: Teresa Hernández-Vela
Adaptación de los espacios:Alejandra López, Ximena Gómez, Construcciones Esmeralda
Apoyo de conservación: Esmeralda Corrales, Leticia Cruz, Rosario Hernández, Olivia Medina
Promotores del proyecto:Eva Hughes, Kelly Talamas
Préstamo de obra: Especial agradecimiento a Riccardo Tisci, Laure Aillagon y Elizabeth van Hammee en GIVENCHY; Jean Paul Gaultier y Thoaï Niradeth en Jean Paul Gaultier; Marilyn Porlan en Comme des Garçons; Dai Rees, Cibeles Henestrosa y Muriel Mercier.

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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