作成: 京都女子大学 生活デザイン研究所
京都女子大学 生活デザイン研究所
はじまり
今では洛中に残る数少ない蔵元となった松井酒造。その歴史は、江戸時代の享保11年(1726)に日本海に面した兵庫県の香住町で始まります。その後河原町竹屋町を経て、大正末に現在地である左京区吉田河原町に移りました。
休蔵と復活
昭和40年代後半、近隣の地下工事の影響で酒造りの中断を余儀なくされます。伏見に蔵を移転し、複数社合同で製造にあたりました。2009年に松井酒造鴨川蔵を復活させ、現在に至ります。
洛中最古の蔵元《酒蔵内部》(2019-01) - 作者: 松井酒造京都女子大学 生活デザイン研究所
京都で一番古い酒蔵
手造り
松井酒造のお酒は少量ずつ手間をかけて育て上げます。造り手の想いは手を通じて製品に宿ると考えているためです。
ここはもろみ造りの工程。醗酵の進む微かな音が聞こえてきます。音を聞き、目で見て、もろみの状態を判断します。このような蔵人の手による細やかな管理が、お酒の味をより一層深めるのです。
洛中最古の蔵元《瓶詰め》(2019-01) - 作者: 松井酒造京都女子大学 生活デザイン研究所
Sake is bottled individually by hand using a mechanical valve.
機械造り
品質向上のために最先端の設備を整えています。機械による徹底した温度管理を行うことが、搾りたての味を楽しんでもらうためには不可欠です。
美酒は美しい自然の中でこそ醸されます。これからも美しい京都で酒造りを続けていくために、太陽光発電を導入しました。蔵で必要な電力の約6割を賄っています。
寺社仏閣への奉納
金閣で知られる鹿苑寺、銀閣の慈照寺より御用命を受け、特別に醸造しています。その他にも相国寺、吉田神社、北野天満宮、松尾大社、石清水八幡宮など歴史ある寺社仏閣御用達の酒蔵でもあります。
吉田神社
室町時代から続く吉田神社の節分祭に出店。火炉祭の火にあたりながらお酒を飲み、無病息災を願います。
松井酒造:洛中最古の蔵元(2019-03-01) - 作者: 松井酒造京都女子大学 生活デザイン研究所
「京千歳」は、古都京都の千歳を願う酒。京都の料亭に愛され続けています。「富士千歳 しぼりたて」は、創業当時から続く銘柄。霊峰富士に千歳の幸せを願い、命名されたと伝えられています。
「慈照寺銀閣寺御用達 白銀閣」のラベル絵は、東山慈照寺書院大広間にある富岡鉄斎作「大江捕魚図」。「鹿苑寺金閣寺御用達 黄金燦然」は、純金箔が浮かぶ華やかな清酒です。
伝統と革新
本物の味を届けること。受け継がれてきたものを守りながら、それを更新していくこと。それが伝統であり革新であると、十五代松井治右衛門さんは語ります。
【取材協力】
・松井酒造株式会社
【動画】
・高山謙吾
【写真】
・前﨑信也 (京都女子大学 准教授)
【テキスト・編集・制作】
・橋上園加 & 松本知夏(京都女子大学生活造形学科)
【翻訳】
・エディ―・Y. L.・チャン
【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也 (京都女子大学 准教授)