琉球の手わざ ―琉球王国の文化―

琉球王国時代から継承されてきた有形無形の文化遺産は、近代化や先の大戦などにより多くを失ってきました。

三御飾(美御前御揃)御酒器(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

琉球王国文化遺産集積・再興事業

沖縄県立博物館・美術館では、琉球王国文化遺産集積・再興事業を実施しています。 この事業は、残された文化遺産から得られる学術的知見や科学分析等の情報を集積するとともに、王国時代にあった8つの手わざ(絵画、木彫、石彫、漆芸、陶芸、染織、金工、三線)を現代の手わざで復元し、世界に誇る沖縄の手わざの力を、モノを通して内外へ発信し、文化観光拠点として沖縄をアピールすることを目的としています。

三御飾(美御前御揃)御酒器 金盃 銀杯洗(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

模造復元とは

模造復元とは、ある作品について調査・研究を重ね、製作された当時の姿を忠実に復元したものを新たに製作することを指します。製作においては、可能な限り製作当時と同じ材料と技法を用います。

三御飾(美御前御揃)御酒器 托付銀鋺(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

玉陵石獅子(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

玉陵石獅子(たまうどぅんいしじし)

第二尚氏の陵墓である玉陵(たまうどぅん)を守護する石獅子で、1501年頃の玉陵造営と近い時期に製作されたとみられます。琉球の獅子はほとんどが四つ足を地につけた形ですが、この獅子は珍しく立ち上がった形をとっています。東室上部の親子獅子は、口を開け子獅子を愛撫し、西室上部の毬取獅子(まりとりじし)は、玉紐をくわえ玉とじゃれています。 玉陵は沖縄戦で被災したため石獅子も墓庭に落ち、一部破損した状態です。1948~1952年の玉陵修復の際に元の位置に戻され、1956年県指定有形文化財となりました。経年による摩耗や戦災で欠損した部分に検討を重ね、一見怪奇だが、どこかユーモラスな石獅子を模造復元しました。

擬宝珠形丁子風炉(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

擬宝珠形丁子風炉(ぎぼしがたちょうじぶろ)

丁子風炉は、上から蓋・釜・炉の3つに分けられます。炉に炭を入れて熱し、釜部分に水を張って丁子(クローブ)を浮かべて漂う香りを楽しんだと考えられています。原資料は、器形全体で宝珠(ほうじゅ)の形を模す丁子風炉です。ふくよかで均整のとれた成形に加え、呉須(ごす)の濃淡で表現された山水の描写が巧みです。原資料は蓋のつまみと釜底が欠損しているが、調査研究結果に基づいて復元し、製作しました。王族や士族が香りを楽しむ当時の文化を知る上でも興味深い資料です。陶工の高い技量を示すやきものとして製作されており、王国文化の一端を示しているため、模造復元資料として選定されました。

孔子及び四聖配像(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

三線 盛嶋開鐘 附胴(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

盛嶋開鐘 附胴(もりしまけーじょー つけたりどう)

三線は、琉球古典音楽や組踊の主要な楽器で、黒漆を塗った工芸品でもあります。棹(さお)の材料にはリュウキュウコクタン(黒檀)が使われています。その堅牢な棹材を直線や曲線的に加工し、鳴り物として良い音を求めて胴内部にも複雑な細工を施す技術は、高度な手わざが求められます。
今日、三線の型は大きく7つの型に分類されています。南風原(はえばる)、知念(ちねん)、久場(くば)、真壁(まかべ)、平仲(ひらなか)、与那城(よなぐすく)と呼ばれた名工に因んだ型名があります。
原資料と比較しながら試作を繰り返し、厳密に模造復元することで、往時の音色を含めた復元を試みました。

赤地五色浮織冠(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

赤地五色浮織冠(あかじごしきうきおりかん)

琉球王国時代、冠は男性の被りもので、その布帛(ふはく)の色や織り方で位階を示しました。帕(ハチマチ)とも呼ばれます。金糸が織り込まれた五色浮織冠は、王や王子クラスの身分の者が身に着けると定められていました。 現存する冠の調査により、薄板、和紙、竹細工、浮織物が使われ、構造も明らかとなりました。その結果に基づき模造復元しました。

白地流水菖蒲蝶燕文様紅型苧麻衣裳(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

白地流水菖蒲蝶燕文様紅型苧麻衣裳(しろじりゅうすいしょうぶちょうつばめもんようびんがたちょまいしょう)

原資料は、国宝「琉球国王尚家関係資料」にある、ンチャナシと呼ばれる夏の衣裳です。苧麻(ちょま)を素材に流水に揺らぐ菖蒲、燕、蝶など大和的な意匠を現した紅型の代表的な作例です。
型紙は王国時代に使われた、糸掛け型紙を模造復元しました。色材は分析結果をもとに、可能な限り当時の材料を使い、布の表と裏から染めました(両面染)。縫製は原資料の調査にもとづき、単衣(ひとえ)の琉服としました。

朱漆巴紋沈金御供飯(模造復元品)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

朱漆巴紋沈金御供飯(しゅうるしともえもんちんきんうくふぁん)

御供飯(うくふぁん)は、琉球の王家・王族家で使用された祭祀道具です。S 字に湾曲した6 本の脚を持つ蓋付脚高盆は、琉球漆器独特の形で他に類を見ません。細い溝を彫って金箔等を埋め込む「沈金」の技法で、琉球王家をあらわす左三巴紋や牡丹唐草文様を器物全体に施しています。蓋には薄いテープ状にした木材を巻き上げる「巻胎(けんたい)」の技法を使用し、身の部分は木材を繋ぎ合わせて形を整えています。
琉球漆器の中でも特に大型で、王家の繁栄を象徴するおめでたい文様をあらわすこの漆器は、最上級の琉球漆器です。

中城御殿 御法事道具 朱漆沈金御徳盆(しゅうるしちんきんうとぅくぼん)出典: Okinawa Prefectural University of Arts University Library and Arts Museum

中城御殿 御法事道具 朱塗沈金御德盆(原資料)

蓋をつくる様子(朱漆巴紋沈金御供飯)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

木のテープを巻き上げ、形を整えます(巻胎技法)。

身をつくる様子(朱漆巴紋沈金御供飯)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

木材を繋合わせて形を整えます。蓋と身の形を整えて素地が完成します。

黒漆塗による加飾(朱漆巴紋沈金御供飯)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

素地に漆を吸わせ、埋物をした後、強度を持たせるために布を貼ります。下地材を塗って研いだら、さらに黒漆を塗って研ぎます。

朱漆塗による加飾(朱漆巴紋沈金御供飯)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

さらに朱漆を塗ります。

沈金による加飾(朱漆巴紋沈金御供飯)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

朱漆の塗面に刀で線を彫り、金箔を押します(沈金)。

製作工程(四季翎毛花卉図巻)出典: Okinawa Prefectural Museum and Art Museum

おわりに

本事業は、7年にわたる長期プロジェクトで、県内外の人間国宝、専門家で構成する24人の監修者の知見、さらに製作においては、国指定重要無形文化財保持団体や沖縄県指定無形文化財保持者、保持団体、東京藝術大学、沖縄県立芸術大学の学生など300 人以上の手わざに関わる人材の力が結集されています。そのことは、製作することの追体験を通して王国時代の手わざの秘密を解き明かすことであり、先人の知恵に触れることです。

提供: ストーリー
提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
もっと見る
関連するテーマ
首里城復興
2019年の火災後、観光客の写真から再構築された世界遺産。
テーマを見る
ホーム
発見
プレイ
現在地周辺
お気に入り