作成: 鳥取県
鳥取県
鳥取の木工芸《工房このか》(2020-03-01) - 作者: 藤本かおり鳥取県
はじまり
「それぞれの性格を持つ木と、対話や相談をしながら制作できる」そういった木工の魅力に魅せられた藤本かおりさん。鳥取県若桜町で活躍する山根粛(やまねただし)さんの木工作品に惚れ込み、生まれ育った地である鳥取で木地師(きじし)として活動することを決めました。木地師とはかつて木材が豊富に採れる場所を転々とし木製の器を作っていた職人のことです。藤本さんが多くの種類の木を使って作品を作るのは、それぞれの持つ良さを使う人に知ってほしいからです。
材料
作品を手にとる時、木が生きてきた物語が分かると愛着を持ってもらえます。長い間場所を変えず生きてきた樹木が持つおおらかさや包容力。物質ではなく生き物としての木だからこその魅力がそこにはあるのです。
面を取った材料を木工ロクロで荒削りをします。木地の外側を削っていきます。収縮したり歪んだりすることを考慮して仕上がり寸法よりも大きく削ります。
想い
小学生のお子さんを持つ母であるからこそ、作り出せる作品があります。それが《育美椀》。地域性を生かすことが条件の「LEXUS匠プロジェクト」で制作したものです。普遍的な美しさや力強さ、古代からの力をお椀に乗せてお子さんの成長を見守るという意味が込められていて、お守りのような存在になることを祈って作られています。
これから
大きく育つまで何十年、何百年もかかる木には人を圧倒する美しさや尊さがあります。現在、木地師は減少してきていると共に、樹木の種類も減っています。そんな中でも作品を作り続けているのは木の持つ美しさと個性を伝えたいからです。今も木が採れるのは、過去に樹木を植えてくれた人がいるからこそ。未来につなぐためにも、消費するだけではなく樹木を育て、木地師だからこそできることは何かを常に考えながら活動しています。
鳥取の木工芸《ドモク堂》(2020-03-01) - 作者: 朝倉康登鳥取県
木工作家である朝倉康登さんはひとつのスプーンを作ったことから木工に魅了されました。もともと木を扱うのが好きで小さいころの夢は大工でした。陶芸家である義父母の勧めもあり、最初は趣味で木工を始めます。ホームセンターで道具を買い、製作場所は近所の公園や自宅のキッチンでした。義父母に誘われて出展した企画展で自分の作ったスプーンが売れたことをきっかけに、本格的に始めることを決めます。
材料
食に関するものを多く作るため、口に入れても安心できる自然素材にこだわっています。海外から輸入した木材では薬品が使われていることがあるため、材料となる木材の選別・管理も行っています。
鳥取県で多く採れる山桜の木は、道管が詰まっているため固く割れにくいという性質があり、食器類を作るのに適しています。使っていくうちに木材の色が変化していくことも木工製品の魅力のひとつであるといえます。
想い
朝倉さんの作品のほとんどはカトラリーや器、バターケースなど、食卓に寄り添う道具です。そこには、「食べる」という生きるうえでとても大切な行為を楽しみながら行ってほしいという思いが込められているのです。
これからも自然にやさしく、食卓まわりの作品を作っていきたいと語る朝倉さん。食器だけではなく、ダイニングテーブルやいすなどの家具を製作することにも挑戦しています。
鳥取の木工芸《白谷工房》(2020-03-01) - 作者: 中村建治鳥取県
木々から感じる安らぎ、ぬくもり、懐かしさ、やさしさ、力強さ。木の表情を活かした作品を生み出す白谷工房(しろいたにこうぼう)。寄木細工という技法を駆使し、アクセサリーや文房具を中心に、家具なども製作しています。
はじまり
20年間大工をしていた代表の中村建治さんは、産業廃棄物として処理される、古い民家を解体した木や建築現場で出た端材に注目します。長い年月をかけて成長した木が捨てられるのを、少しでも減らしたい、違う形で残したいという想いから白谷工房は生まれました。
寄木細工のアクセサリーができるまで
まず、木材を板状に加工します。次に、特殊な方法で小さなパーツにカットしていきます。この工程が寄木細工を作る上で一番の難関です。白谷工房では、小さいもので2.7mmのパーツにカットしています。
こだわり
白谷工房では、虫食い痕も朽ちたところも自然が作り出した表情と捉え、材料の選別は一切行っていません。
また、木を小さく切ることで、無駄なく作品に生まれ変わります。
想いと展開
白谷工房では、地域の働き口として子育てにやさしい職場づくりを心がけています。日南町の魅力を発信したい、という想いから地域ブランド「にちなん日和」を立ち上げました。豊かな自然を活かし、様々な食材や加工品の販売、木育活動を行っています。「木育」とは木との関わりから豊かな心を育てる教育の一環で、白谷工房では積み木などの木のおもちゃを製作しています。
大切にしている言葉
代表・中村建治さんは、大工である父親の影響で小学生の時から大工を志します。18歳から6年間岡山県で修業を積み、24歳で独立。木を無駄にしたくない想いがあり、35歳、テレビで知った寄木細工を独学ではじめました。「実るほど頭が下がる稲穂かな」これは中村さんの大切にしている言葉で、謙虚な姿と、穏やかで優しい人柄が作品にもにじみ出ています。
【資料提供・協力】
・工房このか
・ドモク堂
・白谷工房
【監修】
・鳥取県
【映像】
・高山謙吾
【翻訳】
・エディ― ・チャン
【テキスト・サイト編集】
・稲角理子(京都女子大学 生活生活造形学科)
・岩尾優貴愛(京都女子大学 生活生活造形学科)
・岩崎かなえ(京都女子大学 生活生活造形学科)
・太田千晴(京都女子大学 生活生活造形学科)
・南部桃香(京都女子大学 生活生活造形学科)
【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也(京都女子大学准教授)
【提供】
・鳥取県