作成: 鳥取県
鳥取県
すげ笠とは
農作業など屋外での仕事に重宝されたすげ笠。晴れの日は風通しが良くなり蒸れにくく、雨の日にはスゲが膨張し目がしまるため雨水を通しません。すげ笠には様々な種類があり、地域によって異なります。
鹿野すげ笠の特徴
鹿野すげ笠に使われているのはスゲの一種であるカサスゲです。 円錐形の菅笠。てっぺんのとんぼ結びと笠の表面に映えるあかね色が鹿野すげ笠の特徴です。この色を笠に活かすにはカサスゲを根元から刈り取る必要があるため、収穫の際は機械ではなく鎌を使います。
鹿野町の街並みや自然
上品な町並みが残る鹿野町。戦国武将として知られる亀井茲矩(かめいこれのり:1557-1612)が治めた城下町の名残でもある町なかの水路。流れる水の音があたりの穏やかさと静けさを引き立てます。
鹿野町の街並みや自然
山陰地方によく見られる赤瓦をのせた切妻屋根と格子戸の家屋が軒を連ねています。町を訪れる観光客を格子戸に掛けられた風車やすげ笠が歓迎します。
鹿野について 亀井茲矩
亀井茲矩が江戸時代初期に農閑期の副業としてすげ笠作りを奨励しました。それが鹿野すげ笠の始まりとされています。地元では誰もが知る有名な武将です。
各地へ流通する鹿野すげ笠
18世紀の文献によると、すげ笠は因幡(鳥取県東部)一帯が販路であったようです。最盛期の昭和10年ごろには、年間8万枚以上を生産。副業でありながらも約70軒がすげ笠の製作に従事していました。昭和30年を過ぎた頃に販売組合が発足し、アメリカにも輸出されます。鹿野すげ笠は今も昔もインチ表記で輸出対応です。
鹿野すげ笠を守る会の活動
鹿野すげ笠を守る会では鹿野町内で、スゲの栽培からスゲを加工した工芸品を一貫して製作、販売しています。さらには、大嘗祭に笠を献上している大阪府の深江菅細工保存会をはじめ、県外の生産者との技術交流が盛んです。そして後世につなげるために、地元の中学生にもすげ笠の魅力や技術を伝える活動をしています。
鹿野すげ笠の原料
鳥取県内には約80種類のスゲが存在しますが、鹿野すげ笠には昔からの品種を株分けしたカサスゲを用いています。最終的には成人女性の背丈ほどの高さになります。十分な長さがあり、柔らかく丈夫なことから笠作りに適しています。
鹿野すげ笠(2017-11-19) - 作者: 映像: 高山謙吾(A-PROJECTS)鳥取県
骨組
すげ笠の製作工程は真竹で骨組を作るところからはじまります。生産の最盛期であった昭和初期には骨組みは男性の仕事、スゲを縫うのは女性や子供の仕事とされていました。
へいりづけ
笠の表面を縫うまえに、へりからてっぺんに向けてスゲを配置します。その際に「まわし竹」という竹ひごを使い、スゲをへりの骨組みに留める作業を「へいりづけ」といいます。
縫い
笠の表面のスゲを、一本一本木綿糸で縫い合わせていきます。この作業をすることで、笠は二重構造となり、雨風を通しません。町の人々が作業をする公民館では、耳を澄ますとスゲを通る糸の音が聞こえてきます。
仕上げ
表面のスゲを縫い終えると最後に仕上げの工程です。 笠のてっぺんはその見た目から、とんぼ結びと呼ばれます。6束のスゲが作りだす結び目は、鹿野すげ笠特有のものです。
鹿野すげ笠 《鹿野すげ笠》(2017-11-19)鳥取県
鹿野すげ笠は伝統的な工芸品としての一面を持ちながら、町おこしの一端を担っています。 カサスゲから編み出された日用雑貨は、新しい鹿野の工芸品として訪れる人々を魅了しつづけています。
【資料提供・協力】
・鹿野すげ笠を守る会
・津和野町教育委員会
・鳥取県立公文書館
【監修】
・鳥取県
【映像】
・高山謙吾(A-PROJECTS)
【翻訳】
・エディ― ・チャン
【翻訳監修】
・マーテイ・イエリネク
【テキスト・サイト編集】
・雨宮弘実(京都女子大学 生活生活造形学科)
・石﨑瞳(京都女子大学 生活生活造形学科)
・細木菜央(京都女子大学 生活生活造形学科)
【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也(京都女子大学准教授)
【提供】
・鳥取県