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大漁旗とは
大漁で帰港する漁船が船上に揚げていた旗を大漁旗と呼びます。一説には江戸時代中期頃、漁業権を管理する網元制度ができ、それとともに大漁旗が作られるようになったとも言われています。図柄は海に関したおめでたいもの。筒描きで大胆な構図で染められた大漁旗からは、漁師たちの心意気が伝わってきます。現在では、祭りの時などの船の装飾、結婚式や出産などのお祝いにも使われています。
大漁旗(2019-08-30) - 作者: 松田染物店鳥取県
大漁旗《製作風景(筒描き)》(2020) - 作者: 松田成樹鳥取県
筒描き
大漁旗の作り方です。まず、布に下絵を描きます。モチ粉、ぬか、石灰などを混ぜたのりを渋紙の筒に入れ、下書きの上をなぞるように絞り出し、さまざまな模様を描き出します。これを筒描きと呼び、完成した時の文字や輪郭になるため、熟練の技が必要です。のりはその時々の天気や湿度により、卓越した職人の感覚で配合されます。
大漁旗《筒描きで使用されるのり》(2020) - 作者: 松田成樹鳥取県
染め上げ
筒描きで仕上がった模様をもとに、刷毛を使って染めていきます。乾燥するのが速いため、鮮やかな染料で均一に染めるためには、素速い作業が必要になります。刷毛は鹿や狼の毛を使ったもので、適度なコシとしなやかさがあります。
大漁旗《鮮やかな染料》(2020) - 作者: 松田成樹鳥取県
洗い落とし
筒描きで用いたのりを水でふやかして落としていきます。のりを入れていた部分は染まらずに白く残り、染物の模様を際立たせます。大漁旗には、太陽の熱に強く、色落ちしにくい染料が使われており、1つ1つ手作業で水洗いします。
大漁旗《洗い落とし》(2020) - 作者: 松田成樹鳥取県
天日干し
水洗いが終われば、天日に干します。乾き方に差が出ると、しわになってしまうため、布をぴんと張って固定させます。大きいもので約20~30分、小さいもので約15分かかります。
完成
端縫いをして完成です。サイズが大きい場合、数枚に分けて製作し、縫い合わせます。1枚1枚丁寧に作られた作品からは、機械にはない手のぬくもりと力強さが伝わってきます。
魅力
鮮やかな原色によるカラーリング、モチーフをセンターに配する迫力あるデザイン。その深い色合いは現代のプリント技術では出せません。下書きはデザイン画を見ながら、フリーハンドで描かれます。それは松田染物店だからこそできる職人の技です。大漁旗の勇ましい文字や図柄はすべてオリジナルで、代々受け継がれてきた伝統的なものを基本にしています。濃淡が鮮やかなグラデーションは筒描きによる境界線を作らず、感覚で色をのせ、ぼかしていくことで出来上がります。
最後に
13代目の当主の松田成樹さんは染物職人を始めて24年になります。松田染物店の過去の作品のデザインは和洋問いません。それはお客さんの要望に可能な限り応えたいという松田さんの思いからです。注文は全国各地から入ります。「次はアートとしての染色作品製作に力を入れたい。」松田さんはそうおっしゃいます。
【資料提供・協力】
・松田染物店
・鳥取県
【監修】
・鳥取県
【映像】
・高山謙吾
【翻訳】
・エディ― ・チャン
【テキスト・サイト編集】
・青山美彩(京都女子大学 生活生活造形学科)
・飯田菜月(京都女子大学 生活生活造形学科)
・瀧口智子(京都女子大学 生活生活造形学科)
【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也(京都女子大学准教授)
【提供】
・鳥取県