15 周年をお祝いしましょう!

北前船によって栄え育まれた、湊町のもてなし文化

2019年に開港150年を迎えた新潟港。ここは、江戸時代中期から明治時代まで、「北前船」と呼ばれる日本海を航行した木造帆船で賑わう場所でした。北前船というのは、商品の運搬をするだけでなく、船ごとに商品を仕入れ、それを運んで売るという買い積みのビジネススタイルを持つ船のこと。今で言うところの総合商社のようなもので、新潟では「廻船(かいせん)」と呼ばれていました。

春宵の中で(2015-05-14) - 作者: 杵鞭 範雄出典: Beautiful Rural Views Photo Gallery of Niigata City

新潟では、当時から米が主力商品で、買付に来る船が多かったため、自前で船を持つものは少なく、廻船問屋という生産者と船頭の仲介をする商人が多かったと言われています。そこで育まれたのが、新潟のもてなし文化です。

ふるまち花街の灯り(2019)新潟市の食文化

今でもその名残を感じることができるのが、JR新潟駅から信濃川を越えて、海に抜ける少し手前にある古町(ふるまち)という一角です。ここは、当時、船で物を運ぶために碁盤の目のように堀が張り巡らされ、堀に沿って商店が立ち並ぶと同時に、全国の商人たちをもてなす料亭や割烹が数多く軒を連ねていた場所。日本の三大花街のひとつとして栄えた街でもありました。堀の縁には水面まで枝垂れる柳が植えられ、そこを芸妓たちが歩く姿は、古町の風物詩だったと言われています。

酒亭 久本 芸妓たちの千社札(せんじゃふだ)(2019)新潟市の食文化

日本三大芸妓と称された古町の新潟芸妓

人と物が動く場所には、文化と交流の場所が生まれます。ですから、古町には老舗の料亭や割烹が軒を連ね、新潟ならではな美食と地酒、そして芸妓の踊りや三味線が、今でも宴の席を華やかに彩ります。 最も多い時期で400名以上もいたという新潟の芸妓の特徴は、踊りや唄、三味線などの芸事の素晴らしさ。今は、当時に比べて人数も少なくなったと言いますが、花柳界文化を積極的に残そうと、県外からも芸妓になりたいという女性を受け入れ、〝新潟芸妓〟を育てています。

酒亭 久本の女将 久米幸子さん(2019)新潟市の食文化

長年、芸妓として活躍し、今でもお座敷に出ているという「酒亭 久本」の女将、久米幸子さんは、新潟の芸妓文化をこう語ります。 「新潟の芸妓は、まず、外から来る人たちをもてなす言葉から覚えます。『お兄さま、飲みなる?』『食べなれて』『やわらぎ(お水)あげましょか?』。そういう独特のゆったりとした言葉づかいに、癒されると言ってくださるお客さまも多いですよ。この文化を残していくためには、芸妓を育てると同時に、若いお客様も育てていかないといけません。だから、私も若い芸妓と一緒になって、盛り上げようと頑張っているところです」

女池菜の和え物(2019)新潟市の食文化

漬物 盛り合わせ(2019)新潟市の食文化

新潟のおいしいものや郷土料理にも詳しい女将さん。新潟のお好きな食べ物をお聞きしてみました。

「新潟はやっぱりお米がおいしいですね。あとは、枝豆も欠かせません。日本酒に合わせるなら、ナスとか冬菜とか大根とか、新潟の季節野菜を使った漬物がオススメ。そうそう、新潟はお魚がおいしいのだけど、お刺身にはビールより日本酒。ビールだと生臭さを感じてしまいますから。夏になると、鯨の脂身とナスとミョウガを入れたくじら汁を作るんですけど、うちではそこに冷たいそうめんをつけて食べるの。スタミナをつけるための郷土料理なんですけど、おいしいですよ。新潟っておいしいものがたくさんあるから、旬のものを訊いていただくのが一番かもしれません」

鍋茶屋 灯りがともる外観(2019)新潟市の食文化

老舗料亭がもてなす新潟の旬と食文化の一皿

古町には、老舗の料亭が今でも残っている町ですが、中でも、歴史が古いのが、スッポン料理から始まった1846年創業の「鍋茶屋(なべぢゃや)」と、江戸時代末期にお茶屋からはじまり300年以上の歴史のある「日本料理 行形亭(いきなりや)」。新潟の食材を使ったお料理でもてなし続けてきた両店に、新潟の食について話しを聞きました。

鍋茶屋 料理長 中島元吉氏(2019)新潟市の食文化

鍋茶屋の料理長、中島元吉さんは、新潟の食材についてこう語ります。

「新潟は、海の幸も山の幸もとにかく豊富です。店のある古町のすぐ近くには、昔ながらの市場が残っていますから、朝一番で魚屋や八百屋に立ち寄って、自分の目で見ていいものを仕入れることもあります。いろいろな旬野菜があるので、市場に並ぶもので季節の移ろいを感じますね。冬においしい女池菜(冬菜)が終わると、もうすぐアスパラや山菜、雪下人参が出てくるかなと春の訪れを感じます。お客さまの中には、月に何度もいらっしゃる方もいるので、その都度、ちがう食材、ちがうお料理を楽しんでいただけるように、いろいろな食材を使うようにしています」

鍋茶屋 お椀の品(2019)新潟市の食文化

鍋茶屋 先付(2019)新潟市の食文化

鍋茶屋 前菜(2019)新潟市の食文化

また、行形亭(いきなりや)のご主人、行形和滋さんは、日本海に面した土地柄、常に新鮮な魚を提供できるところも新潟ならでは、と語ります。

行形亭の代表取締役 行形和滋氏(2019)新潟市の食文化

「新潟にはいい漁場があるので、魚も新鮮です。のどぐろは、脂ののった冬、あっさりとした夏と、それぞれにおいしさがあります。全国的には甘エビで通っている南蛮エビやバイ貝はお刺身にしてお出しするとよろこんでいただきけますね。キスも、新潟だとお刺身で食べるのですが、他県の方からすると珍しいのかもしれません。小さいので下ろすのにも手間がかかるのですが、昔からそうやって食べているのは、その方がキスのおいしさを味わえるからでしょうね」

刺身(2019)新潟市の食文化

魚の焼き物(2019)新潟市の食文化

お吸い物(2019)新潟市の食文化

行形亭 鶴の意匠(2019)新潟市の食文化

紅サケ(2019)新潟市の食文化

新潟に根付く鮭をありがたく食べ尽くす習慣

そして、新潟にとっては、魚の中でも鮭が特別だと行形さんは続けます。

「新潟では、鮭が魚の中の魚という上位の位置付け。だから、親しみがありますし、無駄なくいただく習慣があります。身は長い期間食べるために塩引きにしたり、寒風に干して酒びたしというツマミにしたりしますし、頭の軟骨のところは『氷頭なます』という正月料理にします。アラで出汁を取って、根菜と一緒に煮込んだ『こうとう汁』と呼ばれる新潟の雑煮にしたり、イクラは湯どおしした『魚豆(ととまめ)』にして、郷土料理の『のっぺ』や雑煮にかけるんです。鮭一匹の全てをありがたく食べ尽くす。これが、新潟の鮭文化ですね」

のどぐろ(アカムツ)(2018-04) - 作者: せかい鮨新潟市の食文化

新潟の雑煮(とと豆あり)(2017)新潟市の食文化

行形亭 器を掲げお座敷へ向かう(2019)新潟市の食文化

今では、昔のように一匹で買う家庭は少なくなり、家庭では作ることが難しくなった鮭料理もあると言います。そういう今だからこそ、地元の方へのもてなしに昔ながらの郷土料理をお出しすることもある、と行形さんは言います。

「お正月の会食や新年会で地元の方が足を運んでくださった時には、昔ながらの鮭料理をお出しすると、懐かしいと言ってよろこんでくださります。新潟の食文化を残すという意味でも、ここではそういう郷土料理を作り続けたいと思っています」

行形亭 看板(2019)新潟市の食文化

行形亭 入り口でのお迎え(2019)新潟市の食文化

提供: ストーリー

協力:
料亭 行形亭
料亭 鍋茶屋
酒亭 久本


写真: 中垣 美沙
執筆: 内海 織加
編集: 林田 沙織
制作: Skyrocket 株式会社

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
もっと見る

食べ物 に興味をお持ちですか?

パーソナライズされた Culture Weekly で最新情報を入手しましょう

これで準備完了です。

最初の Culture Weekly が今週届きます。

ホーム
発見
プレイ
現在地周辺
お気に入り