西陣絣

染めた糸から生まれる模様

作成: 京都女子大学 生活デザイン研究所

京都女子大学生活デザイン研究所

西陣絣《クラッチバッグ》(2017) - 作者: いとへんunivere京都女子大学 生活デザイン研究所

西陣絣(にしじんがすり)

プリントでは表現できない繊細なグラデーションと光沢が魅力のクラッチバック。西陣絣と呼ばれるこの布で、新たな物づくりがスタートしています。

西陣絣《布》(2017-10-12)京都女子大学 生活デザイン研究所

西陣織のひとつ

京都には「西陣織(にしじんおり)」という日本を代表する織物があります。西陣と呼ばれる地域で作られる12種類の織物がその対象であり、その中のひとつである「絣織(かすりおり)」のことを「西陣絣」と呼びます。織物は経糸と緯糸を織って作られます。その経糸を手括りで防染して染め、組み替えたりずらしたりすることで模様を作り出す西陣織が「西陣絣」です。

西陣絣(2017-10-12)京都女子大学 生活デザイン研究所

絹へのこだわり

西陣絣の魅力は多彩な色で染めた絹糸を使っている点です。日本の絣の多くは木綿の糸を使いますが、西陣絣では絹糸を用います。細いため扱いが難しい代わりに、織物を構成する糸数が多く、繊細な模様をはっきりと表現することができます。使用される経糸は数千本から、時に1万本を超えます。

西陣絣《御殿絣裂本集》(株式会社 矢代仁)京都女子大学 生活デザイン研究所

歴史

絣はインドで発祥し、東南アジアから日本に伝播したといわれています。絣織物は、奈良時代(710-794)からの多様な宝物が保存されている正倉院(756-)にも納められています。室町時代(1336-1573)には能装束、また江戸時代(1603-1868)には武家装束や、武家や公家の御殿で働く女中たちの衣装などにも使われました。これらは西陣でつくられたものと考えられています。 また、昭和初期には絣御召(かすりおめし)と呼ばれる布でできた着物が流行しました。19世紀のものと伝わる西陣絣の見本帖には、江戸時代の浮世絵に描かれた女性の着ている着物にも似た絣が残されています。

西陣絣《御殿絣裂本集》(株式会社 矢代仁)京都女子大学 生活デザイン研究所

西陣絣《着物》(株式会社 矢代仁)京都女子大学 生活デザイン研究所

着物

一般的に西陣織と言えば帯ですが、絣は着物にも使われています。 代表的な着物として「絣御召(かすりおめし)」があげられます 。絹の光沢を生かした先染めの着物は深く繊細な色合をしており、着る人の心に彩を添えます。

西陣絣《絣加工師》(2017-10-12) - 作者: 徳永絣加工所京都女子大学 生活デザイン研究所

絹の経糸で表現する

繊細な西陣絣は絣加工師と呼ばれる職人の手で生み出されます。一般的に西陣絣は経糸で模様を作ります。

西陣絣《絣加工師》(2019) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

絣加工師はデザイン画の模様を織物で再現するのに必要となる加工を経糸に施すのです。

西陣絣《仕掛け(枠張り)》(2020) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

仕掛け(枠張り)

デザイン通りの模様を生み出すには、デザイン画から織上がりをイメージして糸を染色する部分としない部分を決め、防染しなければなりません。そのためにまず、大枠という四角形の枠に糸の束をピンと張ります。

西陣絣《仕掛け(墨打ち)》(2020) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

仕掛け(墨打ち)

大枠に張られた糸の上に染める箇所と染めない箇所を区別する印を打っていきます。

西陣絣《括り(くくり)》(2017-10-12)京都女子大学 生活デザイン研究所

括り(くくり)

絣の命ともいわれる工程が「括り」です。墨打ちに従い、糸を染めてはいけない部分に綿糸や耐水性のある紙、ゴムチューブなどをしっかりと巻き付けます。染色後に素早くほどけるよう、糸の括り方にも工夫が施されています。

西陣絣《括り》京都女子大学 生活デザイン研究所

西陣絣《糸染め》(2017-10-12) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

糸染め

括りを終えた糸は、染色工場で専門の職人によって染められます。糸は再び絣工房に戻され、括りを外されます。 一度に染めることができるのは一色のため、染める色の数だけ括りと染めの工程が繰り返されます。

西陣絣《糸染め》(2020) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

西陣絣《へそあげ》(2020) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

へそあげ

染め終わった糸の束を手に巻き付け、毛糸玉のように糸をまとめ上げます。こうすることで糸が絡まるのを防ぐことができます。巻き終わり手を抜くと、中心がへそのように見えることから「へそあげ」と呼ばれるようになりました。

西陣絣《へそあげ》京都女子大学 生活デザイン研究所

西陣絣《太鼓》(2018) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

巻き付け

へそあげした糸は次の作業のため太鼓という道具に巻きつけます。

西陣絣《柄組み》(2018) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

柄組み

太鼓から延びる糸は、数千本から時に1万本を超えます。それを職人は1本1本数え並びかえ、「枠組み」を行います。これが模様を生む下準備となります。

西陣絣《ずらしと梯子》(2020) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

ずらしと梯子

きれいに並べられた経糸は、西陣絣特有の「梯子(はしご)」という道具にかけられます。高さの違う金属棒に糸を通し、横一列に並んでいた糸同士に「ずれ」を生じさせます。このずれによって、絣模様が生まれます。

西陣絣《梯子(はしご)》(2018-03-19) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

西陣絣《梯子(はしご)》(2017-10-12)京都女子大学 生活デザイン研究所

西陣絣《経巻き》(2017-10-12)京都女子大学 生活デザイン研究所

経巻き

「梯子かけ」でデザイン通りに模様が表現されたら、最後に経糸をちきりという筒に巻き取る「経巻き(たてまき)」をします。絣加工師の作業はこれで終わり。巻きとった経糸は織屋で織られて「西陣絣」の布が完成します。

西陣絣《葛西郁子》(2018-03-19) - 作者: 葛西郁子京都女子大学 生活デザイン研究所

現在の西陣絣

最盛期の昭和30年代には約300人もの絣加工師がいましたが、現在はたった6人。40 代の若手が 1 人いますが残りの5人は高齢者で、後継者不足の問題を抱えています。 伝統を守るだけでなく新しい活用法を見出し広めていくため 、西陣絣の新たな物づくりが始まりました。

西陣絣《いとへんuniverse》(2019) - 作者: いとへんuniverse京都女子大学 生活デザイン研究所

新たな物づくり

着物や帯といったこれまでの用途に加え、普段使いしやすいデザインのバッグや眼鏡ケースなどが制作されています。また、シルクだけではなくコットン素材も試みられています。

西陣絣《巾着バッグ》(2018) - 作者: いとへんuniverse京都女子大学 生活デザイン研究所

提供: ストーリー

【資料提供・協力】
いとへんuniverse
・徳永絣加工所
・葛西絣加工所
・白須美紀
株式会社 矢代仁
COS KYOTO
・杉本星子(お召しプロジェクト)
・高橋裕博(お召しプロジェクト)
・平林久美(お召しプロジェクト)
・葛西郁子(お召しプロジェクト)
・西嶋仁哉(近畿大学経営学科
・中田真規(近畿大学経営学科
・矢野智之(近畿大学経営学科
・川東未来(近畿大学経営学科

【テキスト・サイト編集】
・内藤有紀枝(京都女子大学大学院)
・笠井貴江(京都女子大学現代社会学科

【英語サイト翻訳】
・エディー・チャン
・マーテイ・イエリネク

【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也(京都女子大学准教授

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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