こんにゃくをご存知ですか?日本では、おでんや煮物などで食べられるおなじみの食材。身体に不要なものを掃除してくれるという意味から、「胃のほうき」とも呼ばれ、昔は大掃除のあとには必ずこんにゃくを体内の毒さらいに食べるという習慣があったそうです。食物繊維が多く含まれ、低カロリー、そしてグルテンフリーのこんにゃくは、身体の老廃物を吸収して体外に排出したり、血糖値の上昇を抑えたりと、美容効果も期待できる食品としても注目されています。
今回は、高千穂町でこんにゃく作りの名人といわれる田崎としこさんに、家庭での「こんにゃく作り」について教えてもらいました。一般に食べられているものは乾燥粉末を使って作られますが、ここ高千穂町では、昔からどの農家もこんにゃく芋からつくっていました。日常的に作る人は年々減ってしまい、今では珍しいものになりつつあるそうですが、この地域に住む若い世代にとっても昔から伝わるこんにゃく作りは興味深いもの。田崎さんは地域のイベントなどで、作り方を教えているのだそう。それではさっそく、作り方を見ていきましょう。
こんにゃく作り①こんにゃくの原料
こんにゃくの原料となるのは、サトイモ科の植物「こんにゃく芋」の根。ゴツゴツとした、まるで石のようなこんにゃく芋は、芋によって形も色もさまざま。こんにゃくの原料となる芋に成長するまでに3年はかかるといいます。
こんにゃく作り②茹でたこんにゃく芋をカットする
よく洗ったこんにゃく芋を熱湯に入れ、数時間かけて茹でます。こんにゃく芋に箸がスーッと通るようになることが茹で上がりのポイント。茹で上がったら、適当な大きさにカットし、水にさらします。こんにゃく芋はアクが強くそのままで食べることはできませんが、灰汁(灰を水に入れて出来る上澄みの汁)につけると、アクが中和され食べられるようになります。「最初にこんにゃく作りを考えた昔の人はすごいですよね」と笑顔で話す田崎さん。
こんにゃく作り(2019/2019)出典: GIAHS Takachihogo-Shiibayama Site
ミキサーへ
カットしたこんにゃく芋に水を加え、ミキサーにかけます。そうすると白色のとろみのある液状に。ミキサーにかける際、よもぎやゆずなどを入れることもあるそうで、香りも風味も豊かなこんにゃくになるのだそう。横でこんにゃく作りをお手伝いするのは、田崎さんのお孫さん。おばあちゃんのつくるこんにゃくが大好きだと話します。
こんにゃく作り(2019/2019)出典: GIAHS Takachihogo-Shiibayama Site
こんにゃく作り④練り混ぜる
よく混ぜ合わさったタネをボウルへ移し、手で空気を入れるように混ぜていきます。
こんにゃく作り⑤灰汁を入れ、さらに練る
途中で灰汁を入れ、しっかりと練ります。灰汁の代わりに炭酸ソーダを使う方法もあるのだそう。時々硬さを調節するために水を加えながら、粘りがなくなるまで練ります。軟らかすぎず、硬すぎない状態を見極めるのは長年の経験と勘が必要です。
こんにゃく作り⑥丸める
ほどよく固まってきたら、手のひらサイズに丸めていきます。田崎さんが手のひらでやさしく包みながら形を整えていくと、みるみる綺麗な団子状になっていきます。慣れないととても難しい工程です。こんにゃくの色は、原料の芋の性質によってグレーだったり茶色っぽくなったり様々だといいます。
こんにゃく作り⑦湯で茹でる
団子状に丸めたこんにゃくを、湯に入れて茹でます。丸めたばかりのこんにゃく芋は形が崩れやすいので慎重に。ときどき差し水をしながら、約1時間ほど茹でます。こんにゃくが湯に浮かんでくる頃が、調度よい茹で上がり。こんにゃく独特の香りがしてきました。
こんにゃく作り(2019/2019)出典: GIAHS Takachihogo-Shiibayama Site
新鮮なこんにゃく芋から作ったこんにゃくは、生で食べられます。舌触りがよく噛んだときの弾力と豊かな風味は、今までのこんにゃくのイメージが全く変わるほど感動の美味しさ。田崎さんのおすすめは、かぼす(豊かな香りと酸味を持つ柑橘)を絞った「かぼす醤油」で食べること。季節によってもさまざまな楽しみ方があるそうで、刺身として食べるほかにも、高千穂の夜神楽に欠かせないお煮しめ、きんぴらなどの炒め物にしたりと色々なレシピで食べられています。
協力:
高千穂郷ツーリズム協会
高千穂町
SAVOR JAPAN
写真:中垣 美沙
執筆・編集:林田 沙織
制作:Skyrocket 株式会社