グスタフ クリムトとストックレー邸

ブリュッセルのストックレー邸のダイニング ルームを飾る装飾壁画(フリーズ)制作のための 9 点の下絵

作成: MAK – Museum of Applied Arts

MAK – Austrian Museum for Applied Arts / Contemporary Art

View of the Dining Room at Palais Stoclet(1914)MAK – Museum of Applied Arts

クリムトとストックレー邸

ブリュッセルにあるストックレー邸は、ヨーゼフ ホフマンの設計により、ウィーン分離派の様式で 1905 年から 1911 年にかけて建設された邸宅です。その装飾は、ホフマン自身を含むウィーン工房の多数のメンバー、その他の芸術家や職人により、「Gesamtkunstwerk(総合芸術)」の理念に沿って進められました。絵画、彫刻、建築の 3 つの芸術の統合というこの理念は、建物と内装のデザインだけでなく全体的な装飾の構想において貫かれており、それはウィーン工房の精神とも完全に一致しています。内装を依頼されたのは、1900 年頃に特に有名だった芸術家たちでした。たとえば、カール オットー チェシュカ、エドゥアルト ヨーゼフ ヴィンマー=ヴィスグリル、ルートヴィヒ ハインリヒ ユングニッケルなどが参加しています。

Nine Cartoons for the Execution of a Frieze for the Dining Room of Stoclet House in Brussels(1910–1911) - 作者: Gustav KlimtMAK – Museum of Applied Arts

円熟の技が光る傑作

ダイニング ルームの壁の装飾を委託されたのは、グスタフ クリムトでした。クリムトは数年かけてこの仕事に取り組み、最終的にモザイク画として仕上げられる壁画の下絵を 9 点、原寸大で制作しました。クリムトには数少ない、非常に大きなキャンバスに描かれた作品であり、エジプト、ビザンチン、そして日本の美術の影響が感じられます。クリムトが芸術家として円熟期を迎えていたことを強く示す作品です。

Nine Cartoons for the Execution of a Frieze for the Dining Room of Stoclet House in Brussels: Part 4, Part of the tree of life(1910–1911) - 作者: Gustav KlimtMAK – Museum of Applied Arts

壁画全体の中央のモチーフ、「生命の樹」。その枝は、ストックレー邸ダイニング ルームの横長の壁全体を縦横に伸びています。

Nine Cartoons for the Execution of a Frieze for the Dining Room of Stoclet House in Brussels: Part 3, Part of the tree of life(1910–1911) - 作者: Gustav KlimtMAK – Museum of Applied Arts

ビザンチン美術に着想を得て極端に様式化された生命の樹が、渦を巻きながら遠くまで伸ばす枝は、象徴的模様で飾られています。

Nine Cartoons for the Execution of a Frieze for the Dining Room of Stoclet House in Brussels: Part 5, Part of the tree of life(1910–1911) - 作者: Gustav KlimtMAK – Museum of Applied Arts

渦を巻く金色の枝を飾っているのは、鷹の姿をしたホルス神とホルスの目、極端に様式化された花と葉です。これらはおそらく、ストックレー家が所有していた古代エジプトやビザンチン時代の美術品にヒントを得たものでしょう。

Nine Cartoons for the Execution of a Frieze for the Dining Room of Stoclet House in Brussels: Part 6, Rosebush(1910–1911) - 作者: Gustav KlimtMAK – Museum of Applied Arts

実際の壁画を制作するのは、ウィーン工房、およびフォルシュトナーが立ち上げたウィーン モザイク工房でした。クリムトはこの制作陣のために、下絵に直接指示を書き込んでいます。エナメル、真珠層、金箔といった最高品質の素材のみを使用するようにという内容です。

壁画制作についてクリムトが手書きで書き加えた指示

壁画制作についてクリムトが手書きで書き加えた指示

Nine Cartoons for the Execution of a Frieze for the Dining Room of Stoclet House in Brussels: Part 7, Part of the tree of life(1910–1911) - 作者: Gustav KlimtMAK – Museum of Applied Arts

生命の樹の渦を巻く枝の形と、図案化された花畑については、アッター湖畔に立つヴィラ オレアンダーのひっそりとした庭の景色が直接活かされています。

Nine Cartoons for the Execution of a Frieze for the Dining Room of Stoclet House in Brussels: Part 2, Expectation (Dancer)(1910–1911) - 作者: Gustav KlimtMAK – Museum of Applied Arts

「期待」は、反対側の壁に飾られた「成就」と同様に、「生命の樹」の結論を導く作品です。クリムトは、イサドラ ダンカンやロイ フラー、あるいはウィーンのバレエダンサー、グレーテ ヴィーゼンタールといった、モダンダンスの先駆者たちに強い影響を受けていました。また、ダンサーが顔だけ横を向き体は正面を向いていることから、古代エジプトの人物画を意識していることが明らかにわかります。

「期待」のダンサーの手のポーズによって強調されている豪華な髪飾りは、腕輪と同様、ウィーン工房のデザインを思わせます。

Nine Cartoons for the Execution of a Frieze for the Dining Room of Stoclet House in Brussels: Part 8, Fulfillment (Lovers)(1910–1911) - 作者: Gustav KlimtMAK – Museum of Applied Arts

構図上「期待」の絵と対を成すのが、恋人同士を描いた反対側の「成就」です。日本の着物のような赤地の服を着て、こちらに背を向け足を開いて立っている男性と、花柄のグリーンのドレスを着た女性が、熱い抱擁を交わしています。

一説によれば、この恋人たちはグスタフ クリムトとエミーリエ フレーゲだとされています。クリムトは 1914 年、ブリュッセルで完成したモザイク画を初めて自分の目で確かめた後に、エミーリエに宛てて手紙を出しています。そこには、アッター湖畔の町カンマーにあるヴィラ オレアンダーでこれらの下絵に取り組んでいたときの悩みや不安、喜びを「まざまざと」思い出した、と書かれていました。

Nine Cartoons for the Execution of a Frieze for the Dining Room of Stoclet House in Brussels: Part 9, Knight(1910–1911) - 作者: Gustav KlimtMAK – Museum of Applied Arts

ダイニング ルームの幅の狭い壁を飾った「騎士」。真四角な形状の上にアカンサス文様が描かれ、さらにその上に騎士が鎮座しています。その姿は、「期待」と「成就」の両作品を間で見守る守護神のようです。邸の主であり一家の長であるアドルフ ストックレーが、この「騎士」のすぐ前の席に着いていた、と言われています。

全体の構図は、四角形、三角形、円形で構成されているため、ほとんど幾何学的に図案化されたように見えます。極度に抽象化された「騎士」は、クリムトにしては珍しい作品です。

人物が象徴的に描かれていることを示す資料が発見されていなかったため、美術界では長い間、この作品を「抽象的構図」の絵としかとらえていませんでした。ごく最近見つかった 1 枚の葉書に、「騎士」についてエミーリエに説明するクリムトの言葉が書かれていたために、「抽象的構図」の正体が明らかになりました。

提供: ストーリー

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