時代によって名を変えた宮殿

迎賓館赤坂離宮は、時代に応じた使われ方をし、その使われ方によって名前を変えてきました。その変遷を追いながら、迎賓館赤坂離宮の歴史を紐解いていきます。

本館(創建時)迎賓館赤坂離宮

東宮御所

明治42年(1909)、「東宮御所」として建築されたときから迎賓館赤坂離宮の歴史は始まります。東宮御所とは、皇太子(皇位継承の第一順位にある皇子)のお住まいのことです。 建設の総指揮をとったのは片山東熊。片山は宮廷建築の第一人者で、他の作品には、東京国立博物館表慶館や京都国立博物館明治古都館などがあります。

正門(創建時)迎賓館赤坂離宮

創建当時、正門は黒色で、菊の御紋章の上には王冠がありました。

正門(冬)迎賓館赤坂離宮

昭和の大改修のときに黒色から白色に塗り替えられました。
この塗り替えについて、昭和の大改修の総指揮をとった村野藤吾は、大きな決心が必要だったようで、「赤坂離宮が迎賓館にイメージチェンジする最大のかつもっとも困難な仕事」と「迎賓館赤坂離宮改修記録」に記しています。

菊の御紋章の上の王冠は、英国皇太子接遇時(1922年)より前に外されたと推測されていますが、その理由は分かっていません。

本館(創建時)迎賓館赤坂離宮

創建当時の本館と前庭の様子で、本館へ向かう道の中央は砂利敷きの車道、左右はセメントの歩道です。

前庭迎賓館赤坂離宮

昭和の大改修のときに、中央の道幅を狭め、脇道を作り、中門を設置しているため現代とは全く異なる姿に見えます。

英国皇太子迎賓館赤坂離宮

赤坂離宮

 大正3年(1914)、高輪御所が東宮御所となったため、「赤坂離宮」と呼ばれるようになります。大正11年(1922)、赤坂離宮で英国皇太子を初めて賓客として接遇しました。

車寄せ上のバルコニーから英国皇太子が手を振り、

たくさんの人々が英国国旗を振り歓迎していることが分かります。迎賓施設になる前にも賓客をもてなすために使用されたことが分かる貴重な資料です。

ご成婚迎賓館赤坂離宮

東宮仮御所

 大正13年(1924)、裕仁親王(後の昭和天皇)と久邇宮良子王女がご成婚され、お二人の新居となったため「東宮仮御所」と呼ばれるようになります。写真は、ご成婚を記念し出版された記念葉書です。ご成婚後に入居する予定だった霞ヶ関離宮が大正12年(1923)9月の関東大震災により大きな被害を受けたため、震災に耐えた赤坂離宮に昭和3年(1928)までお住まいになりました。昭和天皇が宮城(現在の皇居)にお移りになった後、再び「赤坂離宮」と呼ばれるようになります。

国立国会図書館(花鳥の間)迎賓館赤坂離宮

国会の管理する赤坂離宮

昭和23年(1948)、赤坂離宮の建物とその敷地が皇室財産から行政財産となり、国会の管理するところとなりました。写真は、昭和23年(1948)から36年(1961)まで国立国会図書館として使用されていた時の様子です。他にも、東京オリンピック組織委員会等の庁舎として使用されました。

裁判所(彩鸞の間)迎賓館赤坂離宮

1948年から1970年まで、彩鸞の間は裁判官弾劾裁判所として使用されました。

昭和の大改修迎賓館赤坂離宮

迎賓館赤坂離宮

昭和49年(1974)、国際関係が緊密化し、外国の賓客を迎える機会が多くなったため、赤坂離宮を改修し、国の迎賓施設として使用することになりました。「赤坂離宮」という名称が国民に長く親しまれていることから「迎賓館赤坂離宮」と名付けられました。写真は、羽衣の間の天井画を修復している様子です。 改修の指揮をとったのは、昭和の大建築家の一人で、文化勲章受章者である村野藤吾。村野は、建物本来の価値や意匠を活かしながらも、迎賓館としての機能と目的に合わせ、親しみのある雰囲気を作り出すよう尽力しています。

昭和の大改修迎賓館赤坂離宮

屋根の改修を行う際、館内の装飾品や絵画等を保護するため仮設上屋を作りました。

昭和の大改修迎賓館赤坂離宮

可能な限り創建当初の姿を忠実に復原する方針のもと、修復作業は行われました。

前庭(初夏)迎賓館赤坂離宮

二つの顔を持つ迎賓館赤坂離宮

平成21年(2009)に明治以降の以降の建造物として初めて国宝に指定されました。そして平成28年(2016)から、接遇に支障がない範囲で通年の一般公開がスタートしました。東宮御所として建設された宮殿は、現在は外交の舞台である迎賓施設としての顔と多くの方々に公開されている文化財としての顔を持ち、これからも歴史を重ねていきます。

タップして利用

前庭でゆっくり本館をご覧いただけます。

提供: ストーリー

協力 平賀 あまな(東京工業大学特任准教授)

写真 大河内 禎
※迎賓館所蔵、外務省外交史料館所蔵の写真あり

翻訳 Eddy Y. L. Chang

制作 迎賓館

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
ホーム
発見
プレイ
現在地周辺
お気に入り