スイーツとデザート

スペインの菓子職人が作るデザートは、数人の有名パティシエとその弟子たちの活躍のおかげで、ここ数年で大きな変化を遂げました。現在のスペインのスイーツ業界で特に注目を浴びているシェフたちを紹介します。

Paco Torreblancaスペイン王立ガストロノミー学会

パコ トレブランカ: 現代のパティスリーの巨匠

トレブランカ氏は世界のトップ パティシエの 1 人です。名の通った最近のパティシエの中には、アリカンテ県ペトレルにある彼の学校で学んだ人もいます。彼はいくつかの店舗も運営しており、そのうちの 1 つはオンラインで販売しています。

Dalí Dessertスペイン王立ガストロノミー学会

トレブランカ氏がパリにやって来たのは 12 歳のときでした。「フランス随一の菓子職人であるジャン ミエ氏の家で働けるよう、父が手配してくれました。」

当時の経験が仕事に対する哲学として彼の心に刻み込まれ、半世紀近くそれを実践してきました。今では学校で生徒にも教えています。そこで彼は息子のヤコブとともに、次のことを生徒たちに伝えようとしています。「大切なのは、パティシエという職業と、最高品質の原材料に対する愛情を持ち、新たな味わいを生み出そうという気持ちを持つことです。言い換えれば、それが伝統的なお菓子作りの本質であり、時代は変われどその根本に変わりはありません。」

Marron Glacé Cakeスペイン王立ガストロノミー学会

トレブランカ氏は、パティシエとして見事なキャリアの持ち主であり、特筆すべきことはいくつもあります。スペインの当時の皇太子(現在のフェリペ国王)の結婚式用にウェディング ケーキを作るよう依頼を受けたことで、彼の名前は料理界を超えて広く知られるようになりました。

Christian Escribàスペイン王立ガストロノミー学会

クリスティアン エスクリバ: 遊び心のあるパティスリー

クリスティアン エスクリバ氏は、1906 年に創業したバルセロナのパティスリー「エスクリーバ」の 4 代目パティシエです。伝統的なお菓子作りに新しいコンセプトや大胆なアイデアが取り入れられるようになったのは、彼の功績です。

Cannelloniスペイン王立ガストロノミー学会

巨大なケーキ、動くケーキ、爆発するケーキなど、彼の作品は想像力豊かで驚かされるものばかりです。一方、世界中のブランドや音楽アーティストのために作られたデザートもあります。

店舗に並ぶケーキ類は、バルセロナのグランビアにある彼のベーカリーで毎日手作りされます。

Pearl oystersスペイン王立ガストロノミー学会

エスクリバ氏は、彼の妻であり同僚でもあるパトリシア シュミット氏とともに製菓学校も経営しています。

この学校では、「デザートは、驚きと興奮、ユニークで忘れられない体験を提供しなければならない。パティスリーで売るのは食べ物ではなく、ささやかな幸せの瞬間である」という哲学を教えています。

Oriol Balaguerスペイン王立ガストロノミー学会

オリオール バラゲ: スイーツの隠し味

製菓学校で本格的に菓子作りを学んだバラゲ氏は、エル ブジで 7 年間働いていました。このレストランで身に付けた料理の知識が現在の作品に活かされていて、たとえば、キャンディーなどの市販のお菓子や、料理用のブイヨン、シトラスソルトなどを使ったスイーツを作ってきました。

Yuzu cocoa, apricot, and chocolateスペイン王立ガストロノミー学会

食材の知識とその印象的な使い方、またその優れた腕前によって、ケーキやデザート、アイスクリーム、さらにはパンに至るまで、斬新さと質の高さを併せ持った作品が作られるようになりました。

「私たちが大切にしているのは、創造性、品質、卓越した技術、そしてチームワークです。日々協力しながら新しいデザート作りを追求し、新たな体験につなげようとしています。」

Texture of OB chocolateスペイン王立ガストロノミー学会

名ショコラティエでもあるバラゲ氏は、数々の国際的デザート コンクールで賞を獲得してきました。その 1 つ「Best Dessert in the World(世界のベストデザート)」コンクールで受賞した「Eight Textures of Chocolate」というケーキは、現在もマドリードやバルセロナの彼のパティスリーで販売されています。

Jordi Butrónスペイン王立ガストロノミー学会

ジョルディ ブトロン: スイーツ好きのシェフ

クリスティアン エスクリバ氏に師事し、フランス菓子作りの修業を積んだジョルディ ブトロン氏。2000 年に、彼は仲間のシェフ、チャノ サグエル氏とともに世界初のデザート専門レストラン「エスパイスクラ」をオープンしました。

Pear, pork crackling, and fennel sproutsスペイン王立ガストロノミー学会

エスパイスクラでは、レストランのデザートというコンセプトを、独自の個性と特徴を持つ 1 つの料理としてとらえ直しています。そこで、この場所ではレストランを経営するだけでなくデザートの専門学校も運営しています。

「技術と味という観点から、デザート作りは絶え間ない学習プロセスだと考えています。革新を求めると同時に伝統を重んじる態度で常に臨まなければなりません。それが、デザートを進化させるために欠かせないことなのです」と、ブトロン氏は言います。

Chocoaddiction (cocoa + ginger + spiced loaf)スペイン王立ガストロノミー学会

ブトロン氏と、同じくパティシエのサグエル氏が最近発表した新たなコンセプトのレストラン「エッセンス — ザ スイート エクスペリエンス」では、ハーブを使った 3 種類のタパス、5 種類のデザート、3 種類のスイーツタパスを提供しています。

Jordi Rocaスペイン王立ガストロノミー学会

ジョルディ ロカ: 独創性にあふれたスイーツ

ロカ三兄弟の三男、ジョルディ ロカ氏は、この料理一家の中では遅いデビューでしたが、アル サリェー ダ カン ロカで働いていたスコットランド人パティシエのおかげで自分の居場所を見つけることができました。

Chocolate anarchy(2014)スペイン王立ガストロノミー学会

2000 年からジョルディ氏が作り始めたデザートは、丁寧に作られていながら、斬新かつ大胆です。彼は、ジローナにある世界的評価の高いロカ氏のレストランで提供されるメニューに調和したデザートを作り続けています。

彼が作るデザートの中でも特に有名なのは、印象的な香りをイメージさせる「Orange Colorology」(この名前から、彼が完成品の姿を重視していることがわかります)や、最近登場した「Anarchy」といった作品です。

Flower bombスペイン王立ガストロノミー学会

アル サリェーでのデザート作りの他に、彼は妻のアレハンドラ リバスさんと一緒に「ロカンボレスク」というアイスクリーム ショップを経営しています。バルセロナ、マドリード、アリカンテに店舗を構え、ドゥルセ デ レチェ、グアバゼリー、コットン キャンディーなどのフレーバーを用意して独創的なアイスクリームを提供しています。

Albert Adriáスペイン王立ガストロノミー学会

アルベルト アドリア: スイーツとデザート

現在「エル バリ」を率いるアルベルト アドリア氏は、兄のフェラン アドリア氏が経営していたエル ブジのデザート部門を 10 年以上にわたり指揮していました。

Margaritaスペイン王立ガストロノミー学会

その頃、彼はロザスのカラモンジョイという場所であるアイデアを思い付きます。それは「デザートワゴン」を「デザート プレート」に置き換える、つまり他の料理と同じようにデザートを皿の上に盛り付けるというものでした。こうして、焼き菓子、ムース、アイスクリーム、スープ、ゼリーなどを用いた斬新なレシピ(たとえばスイーツとハーブの組み合わせなど)が生まれることになったのです。

Corn, chocolate, and caramelスペイン王立ガストロノミー学会

アルベルト氏の作品は現在、バルセロナのレストラン「チケッツ」のデザート スペースである「ラ ドルサ」で提供されています。

ここでは、「パッション フルーツとヘーゼルナッツ アイスクリームを添えたチョコレート クリーム」、「ストラッチャテッラ(水牛のモッツアレラ)のアイスクリーム、バニラトマトとストロベリー ウォーター、バルサミコ ソースがけ」といったデザートが楽しめます。

Ricardo Vélezスペイン王立ガストロノミー学会

リカルド ベレス: ココアのシェフ

リカルド ベレス氏がデザートに興味を持つようになったのは、幼い頃に母親から子供向けの料理の本をもらったときでした。

"Macaron", by Ricardo Vélezスペイン王立ガストロノミー学会

マドリードにあるベレス氏のパティスリー「ムーラン ショコラ」では、伝統的なフランス菓子を独自の手法でアレンジしています。

美味しい作品に満ちた彼のパティシエとしてのキャリアは、マンジャニ チョコレート クリームとバニラシロップ漬けパイナップルを使ったマカロンから始まりました。ベレス氏をとりわけ有名にしたのが、彼が作るトリュフ、焼き菓子、それにチョコレートの飲み物で、そこから「ココアのシェフ」とも称されるようになりました。

Ice Cream by Ricardo Vélezスペイン王立ガストロノミー学会

ベレス氏は「ザ パティシエ」という製菓学校も運営しており、プロの有名パティシエを講師に招いた専門コースを用意して、アイスクリームやブリオッシュなどさまざまなデザートの作り方を教えています。

Fernando Sáenzスペイン王立ガストロノミー学会

フェルナンド サエンス: 型破りのアイスクリーム シェフ

ラ リオハ出身のこのシェフは、ムガリッツやキケ ダコスタといった一流レストランで出されるアイスクリームを、単なるデザートではなく美味しい料理を飾る一品に仕立て上げました。一方で、昔ながらのアイスクリームのシェフという自身のアイデンティティを見失うこともありません。

The ice cream that cheeses dream ofスペイン王立ガストロノミー学会

独学で料理を学んだサエンス氏ですが、家族が経営するレストランで彼が作る「トリハス」(スペインのフレンチ トースト)は人気メニューの 1 つとなっています。

2002 年に、彼は妻のアンジェリネス ゴンザレス氏と一緒にログローニョの中心部にアイスクリーム パーラー「デラセーラ」を開店しました。他に「オブラドール グラーテ」という店もオープンし、店舗内で販売したりレストランに卸したりするアイスクリームを作っています。

The ice cream that cheeses dream ofスペイン王立ガストロノミー学会

サエンス氏は、イチジクの葉のアイスクリームやアルファロ産オイルを使ったレモン アイスクリームなど、コーンかカップに入れて食べられるオリジナルの作品をいくつも作ってきました。

一流レストランで出されるものとしては、ロブスター料理に合わせるサヤエンドウのソルベのチャイブオイル添えといったメニューや、鳩料理に添えるカリフラワー、ウィスキー、コーヒー、生クリームで作ったアイスクリームなどがあります。どちらの料理も、シェフのエネコ アチャ氏が考案したものです。

Julio Blancoスペイン王立ガストロノミー学会

フリオ ブランコ: アストゥリアス生まれのパティシエ

ヒホンとマドリードにあるブランコ氏のパティスリーでは、そのすべての作品に彼の故郷アストゥリアスの面影を感じることができます。

Chocolate mille-feuille with 3 flavorsスペイン王立ガストロノミー学会

たとえば彼のデザートには、アストゥリアス名産のリンゴ、栗、ヘーゼルナッツなどがよく使われます。その一方、ブランコ氏の名前を有名にしたのは、彼が作るクロワッサンです。

Panettoneスペイン王立ガストロノミー学会

ヒホン生まれのブランコ氏は、16 歳のときに地元のパン職人から菓子作りの基本を学び、その後トレブランカ氏とともに修行を続けました。そしてイタリアでパネットーネの存在を知り、その作り方を覚えました。

ヒホンに 1 号店、マドリードに 2 号店を構える彼のパティスリー「ポメ スクレ」では、とても美味しいクロワッサンに出会うことができます。これらは主にヒホンで作られ、数時間以内にマドリードに運ばれます。店内にはコーヒーや紅茶を飲めるスペースもあります。

Josep Maria Rodriguezスペイン王立ガストロノミー学会

ジョセフ マリア ロドリゲス: 若き天才パティシエ

ロドリゲス氏は、2011 年の国際的パティスリー コンクールで優勝した若きパティシエです。その 1 年後、彼はバルセロナに最初の「ラ パスティセリア」をオープンしました。ショーウィンドウには、「ラ シエラ」を始めとする彼の見事な作品が並んでいます。カタルーニャ語でさくらんぼを意味するこの「ラ シエラ」は、ヨーグルト クリーム、スポンジケーキ、チェリーを使ったムースケーキで、今ではこのパティスリーの看板メニューとなっています。

Frozen dressing for cooked prawnスペイン王立ガストロノミー学会

彼は、自分がまだ 8 歳の頃、祖母と一緒に昔ながらのお菓子を作っていたときのことを思い出します。「小さいときからお菓子を作るのが大好きでした。その味や色合いはもちろん、作り方の秘密を知り、そのテクスチャーや香り、感覚、繊細さなどを最も引き出すためにはどうすればよいか研究するのが好きだったのです。」

Limoncelloスペイン王立ガストロノミー学会

「伝統的なお菓子作りに対して深い敬意を抱いていますが、自分はまだ若く、冒険したい気持ちもあります。人の心をつかむ、今までにない斬新な自分だけのデザートを作りたいと思っています。」

Montse Abelláスペイン王立ガストロノミー学会

モンセ アベージャ: 繊細さとバランス感覚の持ち主

モンセ アベージャ氏は子供の頃、焼いたリンゴを使って家族のために即興でデザートを作ったことがあります。自分が作ったものを家族が喜んで食べている姿を見て満ち足りた気分になった彼女は、やがて本格的に料理の世界に進むことになります。

Chia seed soup, apple and celery slush, and strawberry sorbetスペイン王立ガストロノミー学会

ケータリングの専門学校に通っているときでさえ、彼女は自分が「複雑で難しい」と感じているデザート作りに注目してその技術を身に付けようとしていることをはっきりと意識していました。

パコ トレブランカ氏に師事したアベージャ氏は、マドリードのレストラン「サンセローニ」で 2001 年からデザート部門のリーダーを務めており、端正で本格的なデザートを披露しています。

Coffee cream with cooked chocolate mousseスペイン王立ガストロノミー学会

彼女が好んで使う材料は、オリーブオイル、塩、胡椒、そして季節の果物です。

彼女の作品は繊細であると同時に、革新性と創造性を組み合わせた独特なフレーバーを持っています。

「デザート作りは常に大きなチャレンジです。美味しいコース料理を締めくくるものであり、他のメニューと完璧に調和し、バランスがとれていなければなりません。」

提供: ストーリー

テキスト: マリア ガルシア氏

画像: スイーツ専門書籍「ドゥルセ」(Planeta Gastro社より出版)

謝辞: ラファエル アンソン氏(スペイン王立ガストロノミー学会代表)、エレーナ ロドリゲス氏(スペイン王立ガストロノミー学会ディレクター)、マリア ガルシア氏およびキャロリーヌ ヴェルイーユ氏(いずれもスペイン王立ガストロノミー学会貢献者)

スペイン王立ガストロノミー学会

この展示は、スペインの食文化について取り上げた Google Arts & Culture とスペイン王立ガストロノミー学会による共同プロジェクトの一部です。

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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