フェルメールの知られざる 12 の秘密

作成: Google Arts & Culture

Fotograferende bezoekers in een zijkabinet van de Eregalerij met schilderijen van onder andere Johannes Vermeer(2013-04-25)Rijksmuseum

フェルメールの人生については、他の巨匠たちと同様にわからないことだらけです。しかし、何十年にもわたる研究によって少しずつこの画家のイメージが浮き彫りになってきました。フェルメールに関するトリビアをもっと知りたい方は、芸術家であり美術史家でもあるジョナサン ジャンソンが書いた、以下のフェルメールの秘密に関するリストを見てみましょう。

フェルメールの作品数

フェルメールの作品は 36 点の油絵が残されていますが、おそらく 17 世紀の水準を考えると、多くても 60 点ほどではないかと考えられています。なお、同じ時代の偉大な画家であるレンブラントは、何百点もの絵画に無数の彫刻、素描を残しています。

How much did Vermeer paint?

Although 36 oil paintings by Vermeer have survived, he probably depicted no more than 60 in total, a paltry number by 17th-century standards. For comparison, his great contemporary Rembrandt produced hundreds of paintings and countless engravings and drawings.

また、フェルメールの絵画の多くは非常に小さいものです。すべてのフェルメール作品の面積を合計するとレンブラントの『夜警』(3.63 x 4.37 メートル)とほぼ同じ大きさになりますが、レンブラントは『夜警』をたった数か月で完成させています。

マリアとマルタの家のキリスト(1654 — 1656) - 作者: ヨハネス・フェルメールNational Galleries Scotland: National

フェルメールに刺激を与えた場所

フェルメールの父、レイニエル ヤンスはとても勤勉な人でした。カファと呼ばれる上質の織物を販売する一方、デルフトの賑やかな市場からほど近い場所で大きな宿屋を営んでおり、レイニエル一家はその宿の 2 階に住んでいました。宿屋は、仲間同士が集まってビールを飲んで世間話をし、商取引をするのに快適な場所として、オランダの都市生活にはなくてはならない存在でした。多くの宿の店主がそうであったように、レイニエルは自身が営む宿の壁に絵を掛けて売りに出していました。青年時代のフェルメールはこうした絵画から影響を受け、絵を売るために宿にくる画家たちと話をするうちに交流を持つようになったと考えられています。

Like many innkeepers, Renyier hung paintings on the walls of his locale to sell. It’s thought the adolescent Vermeer was inspired by these pictures and mingled with the artists who came there to talk shop.

Vermeer's Girl with a Pearl Earring at the MauritshuisMauritshuis

フェルメールの結婚事情

フェルメールは 21 歳のときに、近隣のゴーダから母親のマーリア ティンスとともにデルフトに移住してきたカタリーナ ボルネスと結婚しました。マーリアは裕福な家系の敬虔なカトリック教徒でしたが、どうやらこの若き画家がカトリックに改宗したために、娘の結婚相手として認めることになったようです。プロテスタントを国教とする当時のオランダでは、カトリックへの改宗は容認されていたものの奨励されてはおらず、フェルメールはリスクを冒すことになったのです。

フェルメールとカタリーナは、デルフトのカトリック教会の広場にあったマーリアの広々とした家に引っ越し、上階の明るいアトリエで絵を描きました。カタリーナは 15 人の子供を産みました(うち 4 人は洗礼を受ける前に亡くなりました)。フェルメールの子供たちの中には、カトリック名を与えられた子もいました。

窓辺で手紙を読む女(ca. 1659) - 作者: ヨハネス・フェルメールOld Masters Picture Gallery, Dresden State Art Museums

世界を巡るフェルメール作品

1800 年代に再評価されて以来、フェルメールの絵画を取り扱う特別展は世界各地で 250 回以上も開催されています。作品の移動距離は 100 万キロを超えていますが、『手紙を書く女』だけでも地球をほぼ 5 周、月までの半分の距離にあたる 25 万キロメートルを旅しています。しかし、フェルメール自身の人生は違いました。知られている限りフェルメールはデルフトを離れたことはなく、今日ならバスでも行ける約 109 キロ離れたアムステルダムへ一度だけ出かけたのみです。

A Lady Writing(c. 1665) - 作者: Johannes VermeerNational Gallery of Art, Washington DC

最も貴重な色

他のオランダ人画家とは異なり、フェルメールは、当時画家たちが入手できた染料の中でも最も美しく鮮やかな天然ウルトラマリンという青い顔料を贅沢に使用したことが知られています。ウルトラマリンの絵の具は、ラピスラズリと呼ばれる半貴石を粉砕してクルミ油と混ぜ合わせ、粘度のあるペーストにすることで作られていました。ラピスラズリの原石はアフガニスタンの山々で採掘され、当時から絵の具の中でも最もコストがかかる、金よりも高価な材料でした。

青衣の女(c. 1663) - 作者: ヨハネス・フェルメールRijksmuseum

女性を描いた画家

フェルメールはよく、女性を描いた画家だと言われます。13 人の男性を描いたのに対して女性は 42 人描いていますが、これは当時のヨーロッパ絵画に登場する男女比の平均の約 4 倍です。しかし、フェルメールが描いた女性にはひとりとして名前が付けられているわけではありません。フェルメールはある特定の美しい女性を 4 回にわたって描いており、批評家たちはこの女性こそが妻カタリーナであると論じています。またこのうち 2 作品では、カタリーナだと思われる女性は妊娠しているように見受けられます。

婦人と召使(ca. 1666−67) - 作者: ヨハネス・フェルメールThe Frick Collection

科学に傾倒するフェルメール

フェルメールは、科学技術の発展に興味を持っていたと考えられています。仕事場にいる 2 人の科学者の姿を描いており、また、水差しや地球儀の円を描くためにコンパスを使用するなど、絵画制作のうえで役立つ技術的手段を多用しました。中でも最も重要な装置は、カメラ オブスクラと呼ばれる単純な光学機器です。このカメラは、画家が素描したいもののイメージを薄いスクリーン、つまり紙やキャンバスに投影するためのレンズを備えた箱で、肉眼では捉えにくい色や光、影の表現を研究するために役立ったと考えられます。熟練した芸術家であれば、主題の形をトレースするためにカメラ オブスクラを使用することもできます。フェルメールも実際に使用してトレースを行ったと考える専門家もいます。

It may help a painter study the most elusive effects of color, light, and shadow. A skilled artist can also use it to trace his subjects, which some art specialists controversially believe Vermeer did.

Officer and Laughing Girl Officer and Laughing Girl(ca. 1657) - 作者: Johannes VermeerThe Frick Collection

ピーテル ファン ライフェンというパトロン

競争の激しい芸術市場において、多くのオランダ人画家は常に生活に困窮していましたが、フェルメールは違いました。フェルメールは画家としての活動を始めたころに、デルフトの住人であり裕福なピーテル ファン ライフェンとある種の経済的支援契約を結んだようです。ファン ライフェンは最終的には一番多い 20 点もの作品を購入しており、これはフェルメールの作品のうちかなりの点数を占めます。この契約により、フェルメールは一定の経済的な安定と絵画制作の機会を保証されました。

Files of notary Jan Joris van Ophoven, 1657-1660 no. 99 Files of notary Jan Joris van Ophoven, 1657-1660 no. 99(1657-11-30)Mauritshuis

ただ同然の『真珠の耳飾りの少女』

フェルメール作品の中で最も印象的なこの絵画は、1881 年に売却されました。この作品は、ブラームスという人物の美術コレクションの一部として、ハーグのオークション ハウスで競売にかけられたのです。絵画の価値に目を付けた著名な美術史家ヴィクトール ド ステュエールは、友人のアーノルド デ トンブに絵画を購入するよう依頼しました。疑いをもたれないようにするため、ド ステュエールとデ トンブは互いに入札しないようにし、デ トンブはわずか 2 ギルダーと手数料 30 セントを支払うことでこの絵を入手しました。

真珠の耳飾りの少女(c. 1665 (digitized by Madpixel)) - 作者: ヨハネス・フェルメールMauritshuis

辛い結末

フェルメールの晩年、幸運の女神は彼を見放しました。債権者への嘆願として、フェルメールの未亡人は次のように証言しました。「フランスとの戦争が激化したために、夫はどの作品も売却することができなかっただけでなく、扱っていた他の画家の絵画も売れずに大きな損害を受けました。その結果、生活に窮し子供たちが大きな負担となったため、ずいぶん衰弱してしまいました。そして、健康だった彼は突然錯乱したかのように 2 日足らずで亡くなってしまったのです」。カタリーナは、夫が残した最も野心的な作品『絵画芸術』を債権者から守ろうと必死になりましたが、結局は守ることができませんでした。

As a result and owing to the great burden of his children having no means of his own, he lapsed into such decay and decadence, which he had so taken to heart that, as if he had fallen into a frenzy, in a day and a half he went from being healthy to being dead.” Catharina tried desperately to keep her husband's most ambitious painting The Art of Painting from her creditors but without success.

絵画芸術(1666/1668) - 作者: ヤン フェルメールKunsthistorisches Museum Wien

オランダの室内に広がる世界

隔離された私的空間という室内の場面を描いたにもかかわらず、フェルメール作品には、画家と外界とのつながりやグローバリゼーションの萌芽が表れています。彼はトルコから輸入された高価な絨毯やドイツ製の高級陶器、イタリアや中国産の貴重な磁器を描写しています。4 点の絵画に登場する弦楽器は、アントワープで製作されたものです。椅子に腰掛けた男性が着用する堅いフェルトの帽子は、北アメリカの罠猟師が捕らえたビーバーの質の高い皮から作られていました。ある作品に見られるタバコのポーチもまた、アメリカ大陸を思い起こさせます。

紳士とワインを飲む女(around 1661) - 作者: Jan Vermeer van DelftGemäldegalerie, Staatliche Museen zu Berlin

忘れ去られた画家

写真や光沢紙を使った雑誌や垢ぬけたアート ギャラリーがない時代、画家としてフェルメールが名声を得るための方法は、文化が栄えた大都市に拠点を置く有力な収集家に多数の作品を売ることだけでした。フェルメールは自身のスタイルを広める仲間や弟子を持たなかったうえに作品を描くペースも遅く、デルフトという小さな町で 1 人の収集家に多くの作品を販売していたため、死の直後には一部のオランダの美術専門家を除いてその名は忘れ去られてしまいました。その後、フェルメールの最高傑作と呼ばれる何点かの作品に、金銭的な価値を高めるために別のオランダ人画家の名前が書き込まれたこともありました。

Théophile Thoré-Bürger(1880/1900) - 作者: Simonet出典: www.rijksmuseum.nl

約 2 世紀の間、誰にも顧みられることのなかったフェルメール作品ですが、フランス人の冒険的な美術評論家であり左派政治家でもあったトレ ビュルガーによって再評価されました。フェルメールの『デルフトの展望』を見て感銘を受けたトレ ビュルガーは、画家の失われた作品を取り戻して伝記を仕上げるために、ヨーロッパの美術コレクション、美術カタログ、オランダの書庫の記録を探すことに残りの人生を捧げました。現在は、フェルメールの 2 つの作品を除くすべての絵画が、世界で最も権威のあるパブリック アート コレクションに加えられています。

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