伏見人形

桃山時代から現代につづく土人形

作成: 京都女子大学 生活デザイン研究所

京都女子大学 生活デザイン研究所

「伏見・深草」『拾遺都名所図会』 立命館大学アート・リサーチセンター所蔵(1787) - 作者: 秋里籬島、竹原春朝斎京都女子大学 生活デザイン研究所

伏見人形とは

伏見人形とは、桃山末・江戸初期頃から伏見でつくられ始めた土人形のことです。起源には諸説ありますが、かつては伏見稲荷大社の稲荷山の土で作られており、土産品として全国各地に広まりました。割れば子供の疳の虫を除く、欠片を田畑に埋めれば実りがよくなり虫がつかない、などとも言われていたようです。明治期には20数軒の窯元がありましたが、昭和初期からあいついで転業し、現在ではほとんど残っていません。

「伏見」『都名所図会』 立命館大学アート・リサーチセンター所蔵(1780) - 作者: 秋里 籬島、竹原 春朝斎京都女子大学 生活デザイン研究所

伏見人形《伏見人形のさまざま》有限会社 丹嘉 所蔵(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

伏見人形のさまざま

伏見人形にはさまざまなモチーフがあります。でんぼ(かわらけのものを大・中・小と三枚重ねにしたもの)やつぼつぼ(直径3~4cm位でふくれた胴にすぼまった口をもつ壺)・柚子でんぼ(柚子の形をした素焼の蓋物)のような、元は日用品や子供用のおもちゃであったもののほか、土鈴のように信仰的な要素をもつもの、教訓話や伝説・神事にかかわる人物や動物をかたどったものなど多岐にわたります。

伏見人形 《伏見人形の製法》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

伏見人形の製法

伏見人形の製法は、粘土で型取りし、窯で焼いたのち胡粉・岩絵具で彩色する、というものです。伏見人形つくりは一年のサイクルでおこなわれています。現在は環境に対する配慮などもあり、従来の窯から電気窯にかわりましたが、それ以外は江戸時代の手法が残されています。

伏見人形《伏見人形の型》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

伏見人形《【春~夏】生地の生成(1)》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

【春~夏】生地の生成(1)

型に粘土を詰め、前後または上下の二面の型を合わせひとつの形をつくります(「型おこし」)。現在残っている原型、土型は2000種ほど。江戸時代から使っている型もあり、往時の風俗や伝説をよくうつしています。

伏見人形《【春~夏】生地の生成(2)》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

【春~夏】生地の生成(2)

数日間、天日干し乾燥させた後、窯へ入れ、900℃以上の温度で10時間ほど焼きます。

伏見人形《【秋~冬】彩色(1)》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

【秋~冬】彩色(1)

まず、「地塗り」といって、刷毛をもちい、人形全体に胡粉を塗ります。

伏見人形《七富士(有卦(うけ=幸運)の富士)》(2017) - 作者: 丹嘉京都女子大学 生活デザイン研究所

七富士(有卦(うけ=幸運)の富士)

「ふ」のつくものを七つ集めると縁起が良い、とされていることからつくられたモチーフです。「富士山」の前に「二見ヶ浦(ふたみがうら・伊勢神宮のほど近く、現在の伊勢志摩国立公園内に位置する。二つの岩が仲良く寄り添った「夫婦岩」が有名。)」に泊まる「舟」、そこに「分銅」、「筆」、「袋」、「文箱」が描かれています。

伏見人形《【秋~冬】彩色(2)》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

【秋~冬】彩色(2)

膠(にかわ)を混ぜた絵具(顔料)で絵付けをおこないます。深い位置や薄い色から塗り始めます。膠が固くならないようあたためながら、一筆ずつ丁寧に色をつけていき、完成です。

伏見人形《成田屋人形》(2017) - 作者: 丹嘉京都女子大学 生活デザイン研究所

成田屋人形

歌舞伎の成田屋・市川団十郎の家の芸として知られる「歌舞伎十八番」にちなんだ人形です。7代目市川団十郎(1791–1859)が天保期に江戸を離れ京阪を回っていた際に、彼の求めに応じ制作したものとされています。

伏見人形《狐》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

稲荷神の眷属とされていることから、伏見人形ではバリエーションの最も豊富なモチーフのひとつです。玉や巻物をくわえたり、尾に宝珠をつけた姿であらわされ、神棚に左右一対としてまつられます。他にも賽銭を俵に入れる姿や千両箱をもつもの、馬に乗っているものなどがあります。

伏見人形《饅頭喰い》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

饅頭喰い

童子が両手に二つに割った饅頭を持っている姿をした立像。父母のいずれが好きかと問われた際、その子が饅頭を二つに割ってどちらが美味しいか尋ね返したという教訓話に取材したものといわれています。

伏見人形《西行》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

西行

西行(1118~1190)は実在の人物です。俗名を佐藤義(のり)清(きよ)(憲清とも)といい鳥羽院の北面の武士でしたが、出家。諸国を行脚して各地に伝説を残し、また歌人としても高く評価されています。背中に風呂敷包みが作りつけられており、たとえ倒れて首が折れようとも「荷物は離さない」ということから盗難除けになるといいます。また神棚にかざると疝気(せんき・下腹痛)にならないとされます。

伏見人形《布袋》(2017)京都女子大学 生活デザイン研究所

布袋

中国、後梁の高僧。大きなおなかが特徴で、日用品を入れた袋を担って町の中を歩き吉凶や天候を占ったといいます。日本では七福神の一人として親しまれ信仰されてきました。唐団扇を持つ笑顔の布袋は、初午(2月の最初の午の日・稲荷社の祭りの日)に求め、荒神棚(台所でまつられる神棚)に祀ると火事除けのおまじないになると信じられていました。また、開運福徳を招くともされ、毎年一体ずつ、前の年より大きい布袋を買ってならべていく、という風習があります。

伏見人形《立雛》(2017) - 作者: 丹嘉京都女子大学 生活デザイン研究所

立雛

伏見人形には干支や節句の人形も数多くあります。桃の節句の立雛のほか、節分の鐘馗、五月の節句の金時などがあります。

伏見人形《羽織猫》(2017) - 作者: 丹嘉京都女子大学 生活デザイン研究所

羽織猫

伏見人形には招き猫のバリエーションも数多くあります。この猫たちのように羽織をきたもののほか、裃をつけたもの、帳を持ったもの、小判にのったものなどがあります。

提供: ストーリー

【資料提供】
有限会社 丹嘉

【テキスト】
・山本真紗子(立命館大学)

【英語サイト翻訳】
・ローラ・ミューラー

【サイト編集・制作】
・山本真紗子(立命館大学)
・松下千空(立命館大学文学部)
・藤川香(立命館大学文学部)
・笠井貴江(京都女子大学現代社会学科)

【プロジェクト・ディレクター】
・山本真紗子(立命館大学)

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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