京桶

作成: 京都女子大学 生活デザイン研究所

京都女子大学 生活デザイン研究所

京桶《湯桶》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

京桶は日常生活に馴染むよう、装飾のない洗練された姿が特徴です。国産の杉、椹、高野槇を用いており、美しい木目にこだわっています。長年使い続けると杉は色合いが深くなります。また竹の箍は艶やかな飴色になり、銀は燻銀色に、銅は古銅色に変化します。

京桶《工房》(2018-12) - 作者: 写真:前﨑信也京都女子大学 生活デザイン研究所

京桶の昔と今

戦前までは京都だけで200軒を超える桶屋が存在していました。しかし、現在ではわずか数軒にまで減少してしまいました。かつては日常的に使われていた木桶が、プラスチック製のものに取って代わられ、工芸品としての特色が強くなりました。

桶屋近藤(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

京桶《木の切断》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

製造工程

湯桶の製造工程について紹介します。はじめに割鎌で木を割ります。

京桶《粗削り》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

Rough Cutting
The split wood is roughly cut using inner and outer draw knives.

京桶《鉋掛》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

表面を鉋で削った後、正直台で側面を整えます。

京桶《上小口の調節》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

上木口の調節

内下がりになるように上木口を削ります。

京桶《勾配の決定》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

勾配の決定

側板の上部と下部にかけてのすぼまり具合を計算します。

京桶《角度の調整》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

側面の角度調節

正直型を用いて、隙間から光が漏れなくなるまで削って整えます。正直台の刃のどの部分を通すかによって削り具合が変わってくるため、熟練の技が必要です。

京桶《側板の厳選》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

側板の厳選

木目の美しさの追求のため、また歪みや収縮を防ぐために同じような木目のものを選びます。

京桶《長さの決定》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

桶の円周

廻し竹を用いて、桶の円周分の長さの側板を集めます。

京桶《仮組み》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

仮組み

仮輪に選別した側板を木目の似た順にはめていきます。

京桶《仮輪締め》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

糊付け

一度仮輪を外し、糊付けをした側板を再び仮輪で組み立てます。金締めを金槌で叩きながら仮輪をしめます。

京桶《鉋掛け》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

上木口の調整

木口鉋で上木口の段差を取ります。

京桶《罫引き》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

高さ揃え

桶の高さに罫引きで筋を付けます。

京桶《下部の切り落とし》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

下木口の調整

筋に沿って、余分な部分をのこぎりで切ります。それから切り口を木口鉋で整えます。

京桶《鉋掛け》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

側面の鉋掛け

仮輪を外し、側面を削ります。その際に上部・中部・下部のそれぞれの丸みに合わせて三種の鉋を使い分けます。

京桶《罫引き》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

桶の厚み

罫引きで筋を付け、厚みを決めます。

京桶《鉋掛け》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

面取り

反台鉋を用いて面取りをし、罫引きで引いた線を分かりやすくします。

京桶《鉋掛け》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

内側の鉋掛け

内丸鉋で桶の内側を削ります。

京桶《罫引き》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

箍(たが)の位置決め

罫引きを用い、箍(たが)をはめる位置に筋をつけます。

京桶《罫引き》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

底板の位置決め

底板をはめる位置に切り罫引きで筋をつけます。

京桶《蟻溝作り》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

蟻溝作り

蟻溝とは、底板が抜けにくくするものであり、上部にかけて斜めに溝が深くなっています。槍鉋(蟻切り)で少しずつ削っていきます。

京桶《箍をつくる》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

箍(たが)作り

桶に合わせ、箍となる銅線を切断し、断面を整えます。銅線が円を描くよう、円柱に巻き付けて癖を付けます。

京桶《箍をつくる》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

Silver-solder is used to join the ends of the circle-shaped copper wire.

京桶《箍を叩く》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

The annealed part during soldering is hammered out and filed evenly.

京桶《箍をはめる》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

箍(たが)はめ

完成した箍を、溝にはめます。後に底板を入れるため、下の箍は完全には締めません。

京桶《底板の鉋掛け》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

底板作り

底板を鉋掛けし、表面を整えます。

京桶《円を描く》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

A compass is used to draw a circle on the bottom board.

京桶《底板を切る》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

帯鋸盤で底板を円形に切ります。この際底板の側面は、蟻溝の角度に合わせて斜めにします。底板は完全な円ではなく、木目の方向による木の収縮の違いを見越してごくわずかに楕円形にします。

京桶《鉋掛け》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

南京鉋(底回し鉋)を用い、底板の側面を削ります。

京桶《木殺し棒》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

木殺し棒で擦り、底板の周囲を僅かに縮ませます。

京桶《底板をはめる》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

底板はめ

打ち込む時の手応えや音で判断し、底板が適切なはまり具合になるまで南京鉋や木殺し棒で調整し、底板をはめます。

京桶《箍はめ》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

完全に底板がはまったら、仮締めしていた箍を筋の位置まで締めます。

京桶《仕上げ》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

仕上げ

正確な平面の出た定盤の上に置き、狂いやガタが無いか確認し、あれば調整します。

京桶《仕上げ》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

The top and bottom rims are rounded off with a plane.

京桶《割鎌》(2018-12) - 作者: 写真:前﨑信也京都女子大学 生活デザイン研究所

Sickles

These are used for cutting the side blocks.

京桶《内銑、外銑》(2018-12) - 作者: 写真:前﨑信也京都女子大学 生活デザイン研究所

内銑・外銑

内銑は側板の内側を、外銑は外側を削るのに用います。使用者は腹当てを付け、台と挟んで木を固定し削ります。

京桶《正直台》(2018-12) - 作者: 写真:前﨑信也京都女子大学 生活デザイン研究所

正直台

台の中央部にあるくぼみに鉋を逆さに入れて使用します。大きな板も安定して一息で削れるようこのように長いつくりになっています。

京桶《正直型》(2018-12) - 作者: 写真:前﨑信也京都女子大学 生活デザイン研究所

正直型

側板の合わせ目の角度を合わせるための型です。桶の大きさによって使う正直型も異なります。これらの正直型は正確に測って自作されています。

京桶《鉋》(2018-12) - 作者: 写真:前﨑信也京都女子大学 生活デザイン研究所

様々な大きさのものがあり、作る桶の種類や場面によって使い分けます。

京桶《罫引き》(2018-12) - 作者: 写真:前﨑信也京都女子大学 生活デザイン研究所

罫引き

切り罫引きと筋罫引きがあります。切り罫引きは切り込みを入れ、筋罫引きは筋を引くためのものです。筋罫引きは刃先が丸めてあり切り込みがはいらないようになっています。

京桶《湯桶》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

湯桶

女性が湯を入れた状態で片手で持つことができるように考えられた大きさです。側面の上部は薄く、下部にかけて厚みがあります。それは武骨な印象を与えず、かつ強度を保つためです。

京桶《片手桶》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

片手桶

京桶の薄手の上品な作りと、持ち手の強度を両立するために持ち手に厚みを持たせています。面取りの美しさにもこだわっています。

京桶《ぐい呑み》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

ぐい呑み

薄く仕上げた軽い口当たりでお酒と木の香りをともに楽しめる器です。酒器には吉野杉が用いられ、その香りは特に日本酒と合うとされています。

京桶《岡持》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

岡持

料理を運ぶ際に用いられる器で、料理を引きたてます。

京桶《スピーカー》(2018-12) - 作者: 近藤太一京都女子大学 生活デザイン研究所

スピーカー

上部に付いたスピーカーから出た音は反射板に当たり四方に広がり、桶の胴で響いた低音は下部から出ます。

京桶《工房》(2018-12) - 作者: 写真:前﨑信也京都女子大学 生活デザイン研究所

京都紫野 桶屋近藤の工房

京都の紫野にある工房です。壁中に所狭しと鉋が立てかけられています。

提供: ストーリー

【取材協力】
・(桶屋近藤 近藤太一


【テキスト】
・大入奈央(京都女子大学生活造形学科
・田中菜月(京都女子大学生活造形学科
・豊田もも(京都女子大学生活造形学科

【映像】
・高山謙吾 ( A-PROJECTS )

【写真】
・前﨑信也 (京都女子大学 准教授

【英語サイト翻訳】
・エディー・チャン

【プロジェクト・ディレクター】
・前﨑信也 (京都女子大学 准教授

提供: 全展示アイテム
ストーリーによっては独立した第三者が作成した場合があり、必ずしも下記のコンテンツ提供機関の見解を表すものではありません。
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