日本最古の大学に正門から入ってみよう

本郷キャンパスにある文化資源:第一部

砲弾型消火栓出典: MATSUDA Akira

東京大学本郷キャンパスを歩いていると、文化資源が至るところに見られます。1877年の大学創立以降に設置された記念碑や建物、芸術品や工作物もあれば、東京大学が生まれる前に本郷の地で活動していた人々が残した造形物もあります。

意図的に保存されているものもあれば、なんとなく残っている不思議なモノもあります。赤門や安田講堂のように知名度の高いものはごく一部で、大半の文化資源は、ひっそりと佇みながら人々に気づいてもらうことを待っています。

三部から成る本サイトでは、いまだ半ば眠った状態にある本郷キャンパス所在の文化資源に光を当て、その背後にあるストーリーを辿りながら、本郷キャンパス、そして東京大学の奥深さを探ります。

銀杏並木出典: KIRIYA Shiene

銀杏並木

最初に紹介するのは、正門から続く銀杏並木です。

樹木が「文化資源」というのは意外に思われるかもしれませんが、大学が意図的に選び、確たる思いを込めて植えたのですから、立派な文化資源です。

銀杏並木は1906年頃に整備されました。「正門を入ったら万人自ら襟を正すような厳粛な雰囲気にしたい」と願った濱尾新総長が、農科大学の本多静六教授と相談した結果、銀杏を植えることになったのです。

1908年頃の銀杏並木出典: University of Tokyo Archives

1908年頃の銀杏並木です。高い木を正門側に植え、奥に行くにしたがって低くすることで、並木道を長く見せました。

写真出典:東京大学文書館所蔵『法科大学卒業記念写真帖(明治41年7月)』

1911年頃の仮正門と銀杏並木出典: University of Tokyo Archives

1911年頃の仮正門と銀杏並木です。

写真出典:東京大学文書館所蔵『法科大学卒業記念写真帖(明治44年7月)』

秋の銀杏並木出典: MATSUDA Akira

以来、銀杏並木は大学とともに100年以上の歴史を歩んできました。

1923年の関東大震災で大学の建物は多く焼失しましたが、銀杏並木は変わらず立ち続けてきました。

今では地域で親しまれる有名なスポットになり、2011年には文京区の「ふるさと景観賞」が授けられました。

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法文十字路

正門と安田講堂を結ぶ銀杏並木の中ほどの十字路で立ち止まり、周囲を見渡してみましょう。

四つ角のそれぞれが法文1号館(1935年)、法文2号館(1938年)、法学部3号館(1927年)、工学部列品館(1925年)で占められ、さらにそれぞれの並木の突き当りには安田講堂(1925年)、総合図書館(1928年)、正門(1912年)、工学部1号館(1935年)を望むことができます。

1931年頃の法文十字路出典: MATSUDA Akira

1896年に仮正門が設けられて以降、濱尾新総長による銀杏並木の整備や大講堂の設置構想、関東大震災(1923年)後の内田祥三による復興計画を経ることで、この一帯は本郷キャンパスの象徴的な空間へと高められてきました。

法文十字路の復元街灯出典: KIRIYA Shiene

一度撤去された街灯は資料に基づいて復元されました。

法文十字路の旧車道部分に敷かれた石畳出典: KOGUCHI Aoi

1994年には石畳と戦前のデザインを復元した街灯が整備され、この歴史的な景観にさらなる魅力を添えています。

旧車道部分は御影石で舗装されました。

法文十字路出典: SUNEYA Kohei

東京大学のキャンパス計画において、法文十字路周辺の建物群は「保存建造物Ⅰ種」に、また十字路の一帯は「歴史的空間Ⅰ種」および「景観軸」に指定されており、この景観を損なわずに未来へと継承することが目指されています。 

360 度すべての方向を歴史的な洋風建築に囲まれた場所は、東大のキャンパスのみならず、今や日本全体でみても貴重なものといえるでしょう。

第一部は、これにておしまい。

第二部では、知られざる場所を訪ねながら、意外な由緒をもつヒマラヤ杉、そして東京大学にとって非公式の歴史を物語るらくがき・はり紙を紹介していきます。

提供: ストーリー

[協力・資料提供]
株式会社大谷研究室
東京大学文書館
東京大学文学部
東京大学文化資源学研究室

[取材・テキスト]
東京大学大学院人文社会系研究科
- 銀杏並木:LEE Kah Hui(リー・カーフイ)
- 法文十字路:強谷幸平
- ヒマラヤ杉:大鐘亜樹
- らくがき・はり紙:桐谷詩絵音
- 塀:清水章文
- 加賀藩邸の名残り:青木蘭
- 総合図書館前の水路遺構:松本玲子
- 図書館前広場の曼荼羅:高口葵

[写真]
桐谷詩絵音
高口葵
強谷幸平
松田陽

[英文サイト翻訳校正]
LEE Kah Hui(リー・カーフイ)

[全体統括]
松田陽(東京大学准教授)

提供: 全展示アイテム
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